生活保護の家具什器費|布団や鍋もない新生活で、買う前に申請する順番

新しい住まいの鍵を持つ手 医療・扶助

アパートの鍵を受け取って部屋に入ったら、あるのは床と窓だけ。布団もない、鍋もない、冷蔵庫もない。路上やネットカフェから、あるいは家を出るしかなかった事情から新しい暮らしを始める方の相談では、こういう最初の夜の話をよく聞きます。

生活保護には、こうしたときに家財をそろえる費用の仕組みがあります。家具什器費(かぐじゅうきひ)と、布団や服のための被服費です。ただし、出る場面が国の通知で決まっていて、買う順番を間違えると使えなくなることがあります。

出るのは、決められた5つの場面

家具什器費の定めは、厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領について」という社会局長通知の第7の2の(6)にあります。次のどれかに当てはまり、福祉事務所が必要と判断したときに支給できる、という書き方です。

  • 保護開始時に、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき
  • 単身の方が長期の入院・入所から退院・退所し、新たに一人で暮らし始めるのに持合せがないとき
  • 災害にあい、災害救助法の救助が行われず、自治体などの救護でもまかなえないとき
  • 転居先の設備が前と違い、いま持っている家具什器が使えないとき
  • 犯罪の被害や同じ世帯の人からの暴力から身を守るため、新たに借家などへ転居するのに持合せがないとき

裏を返すと、受給中に長く使ってきた家電が壊れた、というだけではこの枠に入りません。そこは毎月の保護費のやりくりで買い替えることになります。この線引きは知っておいてください。

暴力から逃れるための転居については、保護課長通知の問98で、緊急でやむを得ない場合は転居の時点で保護を担当している福祉事務所が支給してよい、とされています。引っ越しの前後で担当が変わっても、間が抜けないようにするための取り決めです。

金額の上限と、現物で届くという原則

炊事用具や食器などの家具什器は36,700円の範囲内、真にやむを得ない事情があるときは58,400円の範囲内とされています。暖房器具と冷房器具は別枠で、暖房器具は31,000円(FF式などが必要な場合は78,000円)、冷房器具は熱中症予防が特に必要な方がいる場合に78,000円の範囲内です。エアコンの話は冷房器具の記事、ストーブの話は冬季加算と暖房器具の記事に書きました。

布団は家具什器ではなく被服費のほうに入っています。保護開始時などで使える布団類が全くないとき、再生で足りるなら1組15,300円以内、新しく買う必要があるなら1組22,500円以内です。通知には、本人が使っていたものを再生して使うことを第一に考える、とも書かれています。

そして支給のしかたは、原則として現物給付です。お金を渡されて好きに買うのではなく、福祉事務所が品物を手配する形が基本で、それが適当でないときに限ってお金で出すことができます。設置費用が別にかかってやむを得ない場合は、その分を別に認めることもできるとされています。

冷蔵庫や洗濯機について。通知は「炊事用具、食器等の家具什器」と書いているだけで、品目を一つずつ挙げてはいません。自治体のしおりには「家具・炊事用具・食器・冷暖房器具等」と案内しているところもあります。何がどこまで認められるかは福祉事務所の判断で、自治体によって運用も違います。必要なものを具体的に挙げて相談してください。

買う前に申請する。順番がすべてです

いちばん大事なのはここです。家具什器費は、要件に当てはまるかを福祉事務所が判断し、原則として現物で支給する仕組みです。先に自分で買ってしまうと、あとから費用を出してもらえないことがあります。

保護の申請をするときに、家財がないこともあわせて伝えてください。すでに受給中で転居が決まった方は、引っ越しの前にケースワーカーへ相談です。多くの自治体では保護変更申請書という書類で申し出ます。何が要るのか、布団、鍋、食器、冷蔵庫、照明、カーテンと、紙に書き出して持っていくと話が進みやすくなります。

品物が届くまでに日数がかかることもあります。その間の数日をどうしのぐか、毛布だけでも先に借りられる先はないか、といったことも一緒に相談してください。現物給付が基本なので、どこで何をそろえるかは福祉事務所の段取りに合わせることになります。急ぎの事情があるなら、それもはっきり伝えてかまいません。

転居そのものの費用、敷金や引っ越し代については引っ越し費用の記事にまとめています。

要件に当てはまらなかったとき

家電が寿命を迎えた、生活保護は受けていないが家財をそろえるお金がない。そういうときの道として、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付があります。厚生労働省の案内では、市町村民税非課税程度の低所得世帯、障害者手帳などを持つ方がいる世帯、65歳以上の方がいる世帯が対象で、窓口はお住まいの市区町村の社会福祉協議会です。貸付なので返済があります。借りるかどうかは、窓口で返し方まで聞いてから決めてください。

新しい部屋で何から手をつければいいか分からないときは、住居支援のページをご覧いただくか、無料の相談前チェックからお声がけください。福祉事務所に何をどう伝えるか、一緒に整理します。当会は宅地建物取引業者ではないため、お部屋の仲介はしていません。

出典

・家具什器費の5つの場面、炊事用具・食器等36,700円(真にやむを得ない場合58,400円)、暖房器具31,000円(78,000円)、冷房器具78,000円、現物給付の原則と設置費用、布団類(再生15,300円・新規22,500円)と再生優先の留意事項:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号)第7の2の(5)・(6) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8432&dataType=1&pageNo=2(確認日2026年10月14日)
・暴力から逃れる転居時の支給(転居時点の実施機関による支給):厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号)問98 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8433&dataType=1&pageNo=1(確認日2026年10月14日)
・自治体のしおりでの家具什器費の案内例、保護変更申請書:逗子市「生活保護のしおり」(令和8年1月版)https://www.city.zushi.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/296/shiori.pdf(確認日2026年10月14日)
・生活福祉資金の対象世帯と窓口:厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/index.html(確認日2026年10月14日)

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