通院の交通費は医療扶助から出ます|ただし、先に申請しないと出ません

医療・扶助

医療費そのものは医療扶助で払われるので、窓口での自己負担はありません。ここはよく知られています。知られていないのが、病院へ行くまでの交通費です。

月に何度も通院する方だと、電車とバスの往復でひと月に数千円から一万円を超えることがあります。保護費の中からこれを出すと、生活費が確実に足りなくなります。この交通費は、医療扶助の「移送の給付」として出るものです。

まず、使う前に申請します

ここが本題です。厚生労働省の医療扶助運営要領は、福祉事務所に対して、移送の給付について原則として事前の申請や領収書の提出が必要であることを本人に周知するよう求めています。

そして同じ要領に、こう書かれています。福祉事務所が給付を決定する前に交通機関を利用した際の交通費、また福祉事務所が決定した医療機関・受診日数・経路・交通機関と異なることによって生じた交通費については、原則として給付の対象にならない。

つまり、先に通ってから「交通費がかさんで困っています」と持っていっても、原則としては出ません。これを知らずに数か月ぶん自腹で払い続けた、という話を私たちも聞いています。通院が始まる、あるいは回数が増えるとわかった段階で、ケースワーカーに伝えるのが正しい順番です。

やむを得ない場合の救いもあります。緊急の場合などで事前の申請が困難な事由があると認められ、その事由がなくなったあとすみやかに申請があったときは、事後の申請でも内容を確認して給付して差し支えない、とされています。「急な入院でそれどころではなかった」のような事情は、説明すれば通る余地があります。黙って諦めないでください。

どういう通院が対象になるか

要領は給付の範囲を8つ挙げています。生活の中で出てくるのは、はじめの4つです。

・医療機関に電車やバスなどで受診する場合で、その受診にかかる交通費が要るとき
・傷病や障害の状態により、電車やバスの利用が著しく困難な方が受診する際の交通費が要るとき
・検診命令によって検診を受ける際に交通費が要るとき
・医師の往診などにかかる交通費や燃料費が要るとき

このほか、災害現場からの緊急搬送、離島などでの搬送、医師の指示による緊急転院、移植手術にかかる搬送が挙げられています。

2つめは、タクシーが認められうる根拠です。「電車やバスの利用が著しく困難」とまで言える状態かどうかは、主治医の意見を踏まえて福祉事務所が判断します。本人が乗りたいかどうかではなく、医学的にどうかで決まります。

通う病院は、近いところが原則です

受診する医療機関は、原則として住んでいる場所から比較的近いところに限られます。遠くの病院へ通う交通費を出してもらえるかは、そう単純ではありません。

ただし要領には続きがあります。傷病の状態により近隣の医療機関では対応が困難な場合は、専門的治療の必要性、治療実績、本人と主治医との信頼関係、同じ病気の他の患者の受診行動などを総合的に考えて、適切な医療機関への受診が認められる、と書かれています。

注目していただきたいのが「患者である被保護者と主治医との信頼関係」という一文です。長く診てもらっている先生がいて、そこを離れたくないという事情は、要領の中に根拠を持っています。「遠いからだめ」と言われたときに、この一文を手がかりに話ができます。

手続きの流れと、お金の決め方

申請を受けた福祉事務所は、給付要否意見書(移送)で主治医の意見を確認し、嘱託医との協議や必要に応じた検診命令を経て、必要性を判断します。そのうえで対象となる医療機関、受診日数の程度、経路、利用する交通機関を決定します。移送を要することが明らかで交通費も確実に確認できる場合は、意見書の提出を求めなくてよいとされています。

金額は、傷病の状態に応じて経済的かつ合理的な方法と経路で移送したものとして計算される、最小限度の実費です。医学的管理のために付添人が必要な場合は、その日当なども含まれます。身体障害者などの割引運賃が使えるときは、割引後の額で計算されます。領収書や複数業者の見積書、地域の実態料金などの資料にもとづいて額が決まるので、領収書は捨てないでください。

継続して通う場合、3か月を超えるときは4か月目の分を決める前に継続の要否を検討することになっています。状態からみて3か月を超えることが明らかな場合は、7か月目の分の前に検討することでもよいとされています。更新のタイミングで一度話があると思っていてください。

医療扶助の全体像は医療扶助でどこまでが無料になるのかに、精神科の通院にかかる別の制度は自立支援医療(精神通院医療)に書きました。保護費で足りないものを申し出る手順は生活保護で足りないものを申し出る、ケースワーカーへの伝え方はケースワーカーとのつきあい方にまとめています。横浜市で暮らしや仕事のことにお困りなら、無料の相談前チェックからお声がけください。

出典

・給付の範囲(アからクまで)、受診する医療機関は原則として比較的近距離に限ること、主治医との信頼関係等を総合的に勘案して適切な医療機関への受診が認められること、事前の申請と領収書の提出の周知、給付要否意見書(移送)による審査、決定前に利用した交通費や決定と異なる交通費は原則として給付の対象にならないこと、事後申請の取扱い、3か月・7か月での継続の検討、費用は経済的かつ合理的な方法及び経路による最小限度の実費であること、割引運賃の適用、領収書等の挙証資料による額の決定:厚生労働省「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日社発第727号)第3の9「移送の給付」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8434&dataType=1&pageNo=1(確認日2026年10月5日)

コメント

タイトルとURLをコピーしました