生活保護の家賃を福祉事務所が大家さんへ直接払う「代理納付」|入居審査と滞納防止の関係

家の模型(持ち家のイメージ) 住まい

生活保護を受けている方がお部屋を探すとき、管理会社から「代理納付はできますか」と聞かれることがあります。聞かれた側は何のことか分からず、その場で返事ができない。私たちが受ける住まいの相談でも、ときどき話に出ることです。

代理納付は、家賃を福祉事務所から大家さんや管理会社へ直接払ってもらう仕組みです。大家さんの側にとっては「家賃が確実に入る」ことを意味するので、入居審査の空気が変わることがあります。

本人の口座を通さずに家賃が払われる

生活保護の家賃は、住宅扶助として毎月の保護費と一緒に本人へ支給されるのが基本です。受け取った本人が、自分で大家さんに振り込みます。

代理納付では、この流れが変わります。福祉事務所が住宅扶助の分を本人に渡さず、家賃を受け取る権利のある大家さんや管理会社へ、本人に代わって払います。払った時点で、本人に保護費を渡したものとみなされます。根拠は生活保護法第37条の2と、生活保護法施行令第3条です。

共益費も対象になります。共益費は住宅扶助ではなく生活扶助から出るお金ですが、施行規則で「賃借して居住する住宅に係る共益費」が代理納付できる費用として決められています。

家賃の上限そのものは別の話で、住宅扶助の上限額の記事にまとめています。

「原則として代理納付」になる場面

代理納付は、もともと家賃を滞納している人に積極的に使う、という位置づけでした。2020年4月から、厚生労働省の通知で次の場面は「原則、代理納付を適用する」と改められています。

家賃を滞納している場合 住宅扶助を受け取っているのに、家賃以外に使って滞納している場合。

公営住宅に住んでいる場合 県営・市営などの公営住宅。

セーフティネット住宅に新しく入る場合 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録された住宅へ、新たに入居する場合。

ただし通知には「適用しなくてよい」場合も書かれています。口座振替で家賃が確実に払われている場合、大家さんが希望しない場合、住宅扶助が満額支給されていない場合などです。また、この3つの場面に限らず、福祉事務所が対象者を決めてよいことにもなっています。

意外に思われるかもしれませんが、代理納付を始めるのに本人の同意や委任状は要りません。それでも2024年6月の厚生労働省の資料では、本人に代理納付の実施と趣旨を説明して理解を得るよう努めることが求められています。勝手に切り替わって驚いた、とならないよう、気になる方は担当のケースワーカーに確認してください。

居住サポート住宅では大家さんが求めれば代理納付

2025年10月1日に改正住宅セーフティネット法が施行され、「居住サポート住宅」が始まりました。居住支援法人などが大家さんと連携して、安否確認や見守り、福祉サービスへのつなぎを行う賃貸住宅です。

この住宅に生活保護を受けている方が入居するとき、認定を受けた大家さん側が代理納付を希望すると福祉事務所に通知すれば、福祉事務所は口座振替をしている場合などを除いて代理納付を行うものとされています(同法第53条)。

さらに厚生労働省は2024年6月の資料で、滞納や公営住宅、登録住宅の場合に限らず、住宅扶助と共益費は原則として代理納付とする方針を通知で示す予定としていました。たとえば神戸市は、民間賃貸住宅について原則として代理納付を適用するという要綱を公開しています。どこまで原則になっているかは自治体によって違うので、お住まいの福祉事務所の運用を確認してください。居住支援法人の仕組みについては居住支援法人とはに書きました。

入居前に確かめておきたいこと

代理納付には、本人にとっての良さもあります。家賃の分が最初から引かれた状態で保護費が届くので、生活費の中から家賃を取り分けておく必要がありません。うっかり使ってしまって滞納、という心配が減ります。家賃の滞納がどう進むと退去の話になるのかは、家賃を滞納したら追い出される?で説明しています。

一方で、知っておきたい点もあります。代理納付の対象は月々の家賃と共益費で、何がどこまで入るかは自治体の要綱で決まっています。神戸市の要綱では、家賃の滞納分、補修などの費用、転居の敷金は代理納付の対象にしないと定めています。また、保護が廃止になったり亡くなったりして住宅扶助が払い過ぎになった場合、受け取った大家さんが返還を求められることがある、と厚生労働省は賃貸住宅の業界団体に周知しています。

お部屋探しの段階では、次の順で動くと話が早く進みます。まず担当のケースワーカーに「この物件に移ったら代理納付にできるか」を確認する。次に、その答えを管理会社へ伝える。審査で何度も断られている方は、入居審査に落ちる理由と対策もあわせて読んでみてください。

住まいのことでお困りなら、住居支援のページをご覧いただくか、無料の相談前チェックからお声がけください。福祉事務所へ何を確認すればよいか、一緒に整理します。当会は宅地建物取引業者ではないため、お部屋の仲介はしていません。また、当会は居住支援法人の指定を受けた団体ではありません。

出典

・保護の方法の特例(代理納付):生活保護法第37条の2 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000144(確認日2026年10月14日)
・代理納付できる費用と支払先:生活保護法施行令第3条 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000148、共益費:生活保護法施行規則第23条の2 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000100021(確認日2026年10月14日)
・2020年4月からの原則化(滞納・公営住宅・登録住宅)、適用しなくてよい場合、同意・委任状が不要であること、過払い分の返還:国土交通省住宅局「住宅扶助の代理納付について」(令和2年3月31日 国住備第478号。厚生労働省社会・援護局保護課長通知 社援保発0331第2号ほかを同梱)https://www.pref.miyagi.jp/documents/12239/20200331_seiho_dairinouhu.pdf(宮城県掲載、確認日2026年10月14日)
・居住サポート住宅での代理納付の原則化、住宅扶助と共益費を原則代理納付とする方針、本人への説明:厚生労働省社会・援護局保護課「令和6年 生活保護法等の改正について(居住支援関係)」(令和6年6月26日)https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001267603.pdf(確認日2026年10月14日)
・生活保護法の特例(認定賃貸人の通知と保護の実施機関による支払):住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律第53条 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC1000000112、施行日:国土交通省https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk7_000054.html(確認日2026年10月14日)
・自治体の要綱の例:神戸市「民間賃貸住宅等の賃貸料に係る住宅扶助費および共益費等の家賃代理納付の実施に関する要綱」https://www.city.kobe.lg.jp/documents/12891/dairinoufu20241201.pdf(確認日2026年10月14日)

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