生活保護世帯の子の「進学準備給付金」|大学・専門学校へ進むとき30万円か10万円。申請は合格して入学手続きを始めたら、世帯にいるうちに

ノートパソコンで学ぶ様子 制度・お金

大学や専門学校に合格すると、入学金、引っ越し、家具、パソコン、教科書と、春までにお金の出ていく話が一気に押し寄せます。生活保護を受けている家庭では、保護費の中から進学後の費用を貯めておくことが認められていません。厚生労働省の通知も、この事情を「生活保護世帯特有の事情」として認めています。

そこで平成30年にできたのが「進学準備給付金」です。令和6年の法改正で名前が「進学・就職準備給付金」に変わり、高校を出て就職する子にも出るようになりました。この記事では、大学・専門学校へ進む場合を中心に、額と、受け取るまでの順番を書きます。

額は30万円か10万円。分かれ目は「転居するかどうか」

給付金は一時金で、額は2通りです。入学に伴って転居する人は30万円、それ以外の人は10万円。一般には「自宅外通学30万円・自宅通学10万円」と紹介されますが、通知の言い方は「転居する者」と「その他の者」です。進学のために一人暮らしを始めるなら30万円、家から通うなら10万円と考えてください。

この額は、令和6年の改正のあとも変わっていません。就職する場合も同じ考え方で、就職に伴って転居すれば30万円、それ以外は10万円です。

受け取れるのは一人1回だけです。支給を受けた人には、あとで別の学校に入り直しても、もう一度は出ません。

対象になる人と学校

対象は、生活保護を受けている世帯の子で、18歳になった日のあとの最初の3月31日までにある人です。つまり、高校3年生の春に卒業して進む、いちばんよくある形がこれに当たります。それより年上でも、保護を受けながら高校などに通うことを認められていた人が卒業してすぐ進学する場合は対象です。災害など、やむを得ない事情ですぐに進学できなかった場合は、卒業から1年以内の入学まで認められています。通知は、やむを得ない事情の例として、災害のほか本人の病気やけが、親の看護や介護を挙げています。それ以外の事情がこれに当たるかは、福祉事務所に確かめてください。

進学先は、大学(短期大学を含む)、専修学校の専門課程(いわゆる専門学校)、職業能力開発大学校や職業能力開発短期大学校、水産大学校、国立看護大学校などです。専修学校の一般課程や各種学校でも、修業年限が1年以上で、仕事に就くための技能が身につく学校なら対象になり得ます。予備校や、自動車学校のような日常生活のための技能を学ぶ学校は対象外です。

申請は、入学手続きを始めたら世帯にいるうちに

いつ申請するかが、いちばん大事なところです。法律の言い方では、給付金は「確実に入学すると見込まれる」人に出ます。通知はこれを、志望校に合格して、入学手続きを始めているかどうかで判断するとしています。合格前には申請できません。

そして申請は、原則として、進学する本人がまだ生活保護の世帯にいる間に行います。春になって世帯から外れたあとの申請が認められるのは、入学が確実になったのが保護の変更や廃止の直前だった場合など、やむを得ないときに限られます。合格の知らせを受けたら、その週のうちに担当のケースワーカーへ連絡するくらいの気持ちでいてください。

申請書には、本人の氏名・住所、進学する学校の名前などを書き、次のような書類を添えます。

添える書類 内容
入学が確実なことの証明 入学金を納めた証明の写し、入学金の延納を申請した書類の写し、特待生などで入学金が要らない場合は入学手続きが済んだことを示す書類の写し、のどれか
転居する場合 新しく住む部屋の賃貸借契約書の写しなど
その他 学校の概要が分かる資料など、福祉事務所が求めるもの

部屋の契約がまだ、入学金の納付がまだ、という段階でも申請はできます。通知は、合格通知書や賃貸借契約の見積書の写しを添えて先に申請し、入学までに残りの書類を出す形を認めています。順番を待って申請が遅れるより、そろった分で先に出すほうが安全です。

結果の通知は原則14日以内、学校の調査などに時間がかかる場合でも30日以内とされています。

このお金は、子ども本人のもの

給付金は保護費とは別のお金です。通知は、新生活の立ち上げに役立てるためのものだとして、生活保護の世帯の保護費とは別に、進学する本人に支給するよう定めています。受け取る権利を他人に譲ることはできません。税金はかからず、差し押さえもされません。

家計が苦しいと、つい世帯の生活費に回したくなるかもしれません。ただ、このお金は春からの子どもの暮らしを立ち上げるためのものです。一人暮らしなら敷金や布団、通学なら定期券や教材と、使い道を本人と一緒に決めておくと、あとで困りません。

支給を受ける権利は2年で時効になります。申請を忘れたまま時間がたつと受け取れなくなるので、その点も気をつけてください。

世帯分離との関係

大学や専門学校に進む子は、原則として生活保護の対象から外れます。家に住み続けたまま保護の対象からだけ外れる「世帯分離」になるか、一人暮らしで世帯を出るかのどちらかです。給付金は、こうして保護を受けない立場になる人に出すものだと、通知に書かれています。

分離したあとは、学費も生活費も奨学金やアルバイトで本人がまかないます。日本学生支援機構の給付奨学金には、生活保護を受けている親と同居して通う学生向けの額があり、大学・短大・専門学校の第1区分なら国公立で月33,300円、私立で月42,500円です(通常の自宅通学の額より高く設定されています)。どの区分になるかは審査で決まるので、高校を通じて早めに予約採用の案内を受け取ってください。世帯分離の仕組みや、分離後に医療扶助が使えなくなることは世帯分離の記事に書きました。

通知は福祉事務所に、高校生のいる世帯へ早くから給付金を知らせることや、奨学金、母子父子寡婦福祉資金、社会福祉協議会の生活福祉資金(教育支援資金)もあわせて案内することを求めています。教育支援資金は生活福祉資金の記事で触れています。高校までの教育費は教育扶助の記事、高校の就学費は生業扶助の記事が詳しいです。

進路が決まる前に、話を始めておく

相談を受けていると、春先になってから「そんな給付金があるとは知らなかった」という声を聞くことがあります。合格が分かってから慌てるより、高校2年生から3年生の夏くらいまでに、進学したいことをケースワーカーに伝えておくほうが、手続きは落ち着いて進みます。

家計のことや、子どもが家を出たあとの暮らしのことで不安があれば、無料の相談前チェックから状況を送ってください。メール(info@npokurashi.com)でもかまいません。私たちが内容を読んで、連絡します。給付金の支給や保護のことを決めるのは福祉事務所で、運用は自治体によって違います。私たちはその手前で、話を整理するお手伝いをしています。

出典

・進学・就職準備給付金の根拠と対象(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの被保護者、特定教育訓練施設に確実に入学すると見込まれる者/安定した職業に確実に就くと見込まれる者):生活保護法第55条の5 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000144(確認日2026年10月27日)
・対象者の範囲(高等学校等就学者、やむを得ない事由による1年以内の入学)、特定教育訓練施設、申請書の記載事項、支給の時期、再支給の制限:生活保護法施行規則 第18条の7〜第18条の11 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000100021(確認日2026年10月27日)
・制度の趣旨(保護費から進学後の費用を貯蓄できない事情)、「確実に入学すると見込まれる」の判断、世帯分離等で被保護者でなくなる者に支給すること、申請の時期と添付書類、標準処理期間、支給額(転居する者30万円・その他10万円)、給付金の性格(保護金品と異なる、非課税、差押禁止、本人への支給、2年の時効、再支給なし)、やむを得ない事由の例、周知と他の支援制度の案内、対象となる専修学校等の要件:厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による進学準備給付金の支給について」(平成30年6月8日 社援発0608第6号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3452&dataType=1&pageNo=1(確認日2026年10月27日)
・名称の変更(進学・就職準備給付金)、就職する者への対象拡大(令和6年1月1日から適用)、改正後の支給額(転居する者30万円・それ以外10万円):厚生労働省社会・援護局長通知「『生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律』の一部施行について(公布日施行分関係)」(令和6年4月24日 社援発0424第2号)https://www.mhlw.go.jp/content/001249559.pdf/同「『生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律』の公布等について」(令和6年4月24日 社援発0424第1号)https://www.mhlw.go.jp/content/001563155.pdf(いずれも確認日2026年10月27日)
・給付奨学金の月額(生活保護を受けている生計維持者と同居して通学する場合のカッコ内の額):日本学生支援機構「給付奨学金の支給額」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/kingaku.html(確認日2026年10月27日)

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