「生活保護を受けることになったら、いま来てもらっているヘルパーさんはどうなるのか」。高齢の方やそのご家族から、こう聞かれることがあります。結論から言うと、生活保護を受けていても介護サービスは使えます。費用の自己負担分を出すのが介護扶助(かいごふじょ)です。
ただ、年齢と医療保険の入り方によって、介護保険と介護扶助の分担が変わります。この記事では、その違いと、介護保険料の扱い、ケアプランや事業所について知っておきたいことを書きます。
介護扶助で使えるサービス
生活保護法第15条の2は、介護扶助の範囲として、居宅介護、福祉用具、住宅改修、施設介護、介護予防、移送などを挙げています。ヘルパーの訪問やデイサービスのような在宅のサービスは、ケアプラン(法律の言葉では居宅介護支援計画)に基づくものに限られます。介護保険とほぼ同じメニューを、生活保護の側から支える形です。
介護扶助は原則として現物給付です。お金を受け取って自分で払うのではなく、生活保護法の指定を受けた介護事業所(指定介護機関)がサービスを提供し、費用は福祉事務所の側から支払われます。医療扶助と同じ仕組みで、医療扶助については医療扶助の記事に書きました。
65歳以上と40〜64歳で分担が変わる
介護保険には、65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳で医療保険に入っている第2号被保険者がいます。生活保護を受けていても、介護保険の被保険者であれば介護保険が先に使われ、介護扶助はその自己負担分を受け持ちます。
| 区分 | 介護保険 | 介護扶助 |
|---|---|---|
| 65歳以上(第1号被保険者) | 9割 | 1割 |
| 40〜64歳で医療保険に加入(第2号被保険者) | 9割 | 1割 |
| 40〜64歳で医療保険に未加入 | なし | 10割 |
3段目が分かりにくいところです。生活保護を受けると国民健康保険から外れるため、40〜64歳で会社の健康保険にも入っていない人は、介護保険の被保険者ではなくなります。それでも介護が必要になったときは、費用の全額を介護扶助で受け持ち、介護保険と同じ水準のサービスを使えるようにしています。自治体の資料では、この人たちを通称で「みなし2号」と呼んでいます。
ただし、40〜64歳で対象になるのは、介護保険の第2号被保険者と同じく、要介護状態の原因が特定疾病の場合です。特定疾病は政令で16が定められていて、回復の見込みがないと医師が判断したがん、関節リウマチ、脳血管疾患、初老期の認知症、パーキンソン病、糖尿病性の神経障害・腎症・網膜症などが入っています。けがや、特定疾病でない病気が原因の場合は、この枠に入りません。障害福祉のサービスなど別の道を、福祉事務所や相談支援の窓口で確かめてください。
介護保険料は、保護費の中で手当てされる
65歳以上の方は、生活保護を受けていても介護保険料を納めます。その分の扱いは、払い方によって2通りあります。
年金から天引きされている場合(特別徴収)は、厚生労働省の通知で、天引きされた後の実際の受取額を収入として数えることになっています。保険料の分だけ収入が少なく数えられるので、結果として保護費で補われます。納付書や口座振替で払う場合(普通徴収)は、告示で生活扶助に介護保険料加算がつき、加算額は保険料の実費です。納付書が届いたら、払う前にケースワーカーに見せてください。
40〜64歳で働いて会社の健康保険に入っている方は、給料から介護保険料が引かれます。給料から引かれる社会保険料は、収入を数えるときに必要経費として差し引かれます。
ケアマネジャーと事業所はそのままでいいのか
介護扶助を使うには、サービスを出す事業所が生活保護法の指定介護機関である必要があります。いまの法律では、介護保険の指定を受けた事業所は、あらかじめ別段の申出をしない限り、生活保護法の指定も受けたものとみなされます。多くの場合、いまのケアマネジャーやヘルパーの事業所をそのまま使えます。ただ、申出をして外れている事業所もあるので、念のため事業所に確かめてください。
流れはおおむね次のとおりです。福祉事務所に介護扶助を申請し、ケアマネジャーが作ったケアプランの写しを福祉事務所に出します。福祉事務所は要介護認定の結果とケアプランをもとに介護扶助を決め、介護券を事業所に送ります。介護券は、生活保護には介護保険証にあたるものがないため、福祉事務所が毎月、事業所に資格や本人支払額を知らせる書類です。介護保険の被保険者でない人は、手続きの一部が介護保険の人と違います。
住宅改修や福祉用具の購入は、工事や購入の前に相談してください。通院の交通費と同じで、先に話を通すことが一番の近道です(通院交通費の記事)。認められる範囲は福祉事務所が判断し、自治体によって運用が違います。
介護が必要になってから生活保護を考える方へ
年金だけでは介護サービスの自己負担まで回らない、という相談は少なくありません。介護が必要だから生活保護は無理、ということはなく、むしろ介護扶助があることで、サービスを減らさずに暮らしを続けられる場合があります。年金生活の方の生活保護については高齢者と生活保護の記事、手続きは申請の流れにまとめています。
ご本人やご家族が、どこから話せばいいか分からないときは、無料の相談前チェックに、いまの暮らしと介護の様子を書いて送ってください。私たちから折り返しご連絡します。
出典
・介護扶助の対象者と範囲、現物給付の原則、指定介護機関と介護保険の指定によるみなし指定:生活保護法第15条の2、第34条の2、第54条の2 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000144
・生活保護を受けている世帯の国民健康保険の適用除外:国民健康保険法第6条第9号 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
・特定疾病:介護保険法施行令第2条 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/410CO0000000412
・介護保険料加算(普通徴収・実費)、介護扶助基準:厚生労働省「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)別表第1第2章7、別表第5https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82051000&dataType=0
・介護保険料加算の認定、特別徴収された年金の収入認定、介護費の計上:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号)1ページ目・2ページ目
・勤労収入から差し引く社会保険料:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号)第8https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8431&dataType=1&pageNo=1
・介護保険と介護扶助の負担割合(9割・1割、被保険者以外は10割)、ケアプランの写し、介護券の役割:埼玉県「介護扶助について」https://www.pref.saitama.lg.jp/a0602/kaigohujyo/index.html、同「介護扶助の実施方式」https://www.pref.saitama.lg.jp/a0602/kaigohujyo/910-20091209-91.html
(いずれも確認日2026年10月19日)

コメント