「障害年金って、手や足が不自由な人のものですよね」。相談の席で、うつ病で長く仕事を休んでいる方からそう言われたことがあります。日本年金機構の案内では、障害年金の対象は手足などの外部障害だけではありません。精神障害や内部障害も含まれ、精神障害の例として統合失調症、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害などが挙がっています。
ただ、障害年金は待っていても届きません。自分で請求して、はじめて審査が始まります。そして請求の準備は、ほとんどが「初診日」をめぐる話です。
最初に確かめるのは初診日
初診日は、障害の原因になった病気やけがで、初めて医師の診療を受けた日です。途中で病院を変えていても、いちばん最初にかかった日が初診日になります。眠れない、食欲がないと内科に行ったのが最初なら、その内科の日が初診日として扱われることがあります。どの日になるかは、記録をもとに年金事務所で確かめてください。
初診日がどの年金に入っていた時期にあるかで、請求先と受け取れる年金が分かれます。国民年金の加入中や20歳前なら障害基礎年金、会社勤めで厚生年金に入っていた時期なら障害厚生年金です。障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金は1級と2級だけです。
最初の病院が閉院していて証明が取れない、という相談もよくあります。年金機構の資料では、初診日を合理的に推定できる書類があれば、本人が申し立てた日が初診日と認められる場合があるとされています。諦める前に年金事務所に相談してください。
保険料の条件は「初診日の前日」で見ます
納付の条件は2つのうちどちらかを満たせば足ります。ひとつは、初診日の前日の時点で、初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あること。もうひとつは特例で、初診日が令和18年3月末日までにあり、初診日に65歳未満なら、前々月までの直近1年間に未納がなければよいとされています。
ここで効いてくるのが免除です。免除された期間は、未納とは扱われません。払えない月があるなら、放っておかずに免除を申請しておくことが、いつか自分を守ります。手続きは国民年金の保険料が払えないときの記事に書きました。なお、20歳前の年金に入っていない時期に初診日がある場合は、納付の条件はありません。
障害認定日と、あとから悪くなったとき
障害の状態を見る日を障害認定日といいます。原則は初診日から1年6か月を過ぎた日です。その日に障害の状態にあれば、障害認定日の翌月分から年金を受け取れます。認定日から何年もたっていても請求はできますが、5年より前の分は時効で受け取れません。
認定日には軽かったけれど、その後に悪くなった場合は「事後重症」として請求できます。この場合は請求した日の翌月分からなので、遅れるほど受け取り始めも遅れます。請求書は65歳の誕生日の前々日までに出す必要があります。
令和8年度の障害基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれの方で2級が年847,300円、1級が年1,059,125円です。生計を同じくする子がいれば、2人目まで1人243,800円、3人目から1人81,300円が加わります。障害厚生年金の3級は、最低保障額が635,500円です。障害者手帳の等級と年金の等級は別のもので、手帳が3級だから年金は出ない、とは限りません。どの等級に当たるかは診断書をもとに日本年金機構が判断します。
20歳前に初診日がある障害基礎年金には所得制限があり、扶養親族がいない場合、前年の所得が3,761,000円を超えると半額、4,794,000円を超えると全額が止まります。
生活保護を受けている、または考えている方へ
障害年金を受け取ると、生活保護の計算では収入として扱われます。保護の実施要領は、年金などの公の給付について実際の受給額を収入として認定するとしています。そのぶん保護費は減りますが、足りない分は引き続き生活保護で埋まります。
一方で、障害の程度によっては生活保護に障害者加算が上乗せされます。年金をもらうと損をする、という単純な話ではありません。仕組みは障害年金と生活保護、障害者加算の記事にまとめました。生活保護は他の制度を先に使うことが前提なので、受給中に福祉事務所から障害年金の請求を勧められることもあります。
精神科に通っている方は、通院の自己負担を軽くする自立支援医療(精神通院医療)もあわせて確かめておいてください。うつで働けない状態での生活保護についてはこちらの記事に書いています。
どこに相談するか
国民年金に入っていた時期や20歳前に初診日がある方は、お住まいの市区町村役場の国民年金の窓口でも請求できます。厚生年金に入っていた時期に初診日がある方は、年金事務所か街角の年金相談センターです。対面で相談するなら予約をしておくと待たずに済みます。電話のねんきんダイヤルは0570-05-1165で、受付は月曜8時30分から19時、火曜から金曜は17時15分まで、第2土曜は9時30分から16時です。
診断書を書くのは主治医です。日常生活で何ができて何ができないのか、普段の診察では話していないことも多いと思います。メモにして渡すと伝わりやすくなります。手続きが込み入っているときは、社会保険労務士に相談する方法もあります。
年金の請求と並行して、いまの生活費や住まいが心配な方もいるはずです。そちらは私たちに話してください。無料の相談前チェックから、いまの状況を送っていただければ、折り返しご連絡します。
出典
・対象となる病気やけが、受給の3要件、納付要件と特例、障害認定日による請求と事後重症による請求、5年の時効、令和8年度の年金額・子の加算額・3級の最低保障額、20歳前障害の所得制限、障害の程度と手帳の等級の違い、請求書類の提出先、ねんきんダイヤル:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
・障害基礎年金の受給要件と支給額:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
・障害認定日の定義:日本年金機構「障害認定日」https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/sagyo/ninteibi.html
・請求に必要な書類と提出先:日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/shougai/seikyu/20140519-01.html
・年金の収入認定:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」第8https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8431&dataType=1&pageNo=1
(いずれも確認日2026年10月14日)


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