保護費が入った日に使い切ってしまって、月末の2週間が持たない。通帳を自分で持っていると不安になる。郵便で届く書類の意味が分からず、開けないまま積み上がっている。
こういうご相談を受けると、私たちはまず社会福祉協議会の名前を出します。日常生活自立支援事業という仕組みがあるからです。名前が硬いので知られていませんが、やっていることはとても実務的です。
どういう仕組みか
厚生労働省の説明では、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などのうち判断能力が不十分な方が、地域で自立した生活を送れるように、本人との契約にもとづいて福祉サービスの利用援助などを行う事業です。
実施しているのは都道府県や指定都市の社会福祉協議会で、実際の窓口は市町村の社会福祉協議会などにあります。横浜市にお住まいなら、区の社会福祉協議会が入口になります。
対象になるのは、次の2つをどちらも満たす方です。ひとつは、判断能力が不十分な方。認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで、日常生活に必要なサービスを使うための情報を集めたり、理解したり、判断したり、意思を伝えたりすることを自分だけでは適切に行いにくい方です。もうひとつは、この事業の契約内容について判断できる能力があると認められる方です。
2つめが入っているのが、この制度の形を決めています。契約でできる仕組みなので、契約の意味が分かる段階であることが前提です。そこを超えてしまっている場合は、成年後見制度のほうへ話が移ります。
やってもらえること
厚生労働省が挙げている援助の内容は、大きく3つです。福祉サービスの利用援助、苦情解決制度の利用援助、そして住宅改造や家屋の貸借、日常生活上の消費契約、住民票の届出といった行政手続に関する援助です。
これに伴うものとして、次の2つが挙げられています。
・預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続など、利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)
・定期的な訪問による生活変化の察知
月に一度まとまって入るお金を、週ごとに渡してもらう形にする。公共料金の払い込みを一緒にやってもらう。通帳を預けて、必要なときに引き出しに付き添ってもらう。そういう使い方をされている方がいます。
そして「定期的な訪問による生活変化の察知」のほうが、実は効きます。お金のやりとりのために誰かが定期的に来るという形は、体調の悪化や生活の崩れに早く気づく仕組みでもあります。ひとりで暮らしていると、気づいてくれる人がいないこと自体が危険になります。
住民票の届出など行政手続の援助が入っているのも、使いどころがあります。転居したのに届出が済んでいない、という状態は、後から保険や給付の手続きで必ず引っかかります。
生活保護を受けていれば無料です
利用料は実施主体(社会福祉協議会)が決めます。厚生労働省が参考として示している全国の平均は、訪問1回あたり1,200円です。
ただし、契約を結ぶ前の初期相談などにかかる経費と、生活保護受給世帯の利用料は無料とされています。つまり生活保護を受けている方は、お金の心配なく使えます。そして受給していない方も、相談してみる段階ではお金がかかりません。
ここは誤解されやすいところです。「お金の管理を頼むのにお金がかかるなら無理だ」と思って電話をかけない方がおられます。相談は無料です。
申し込みから契約まで
流れは4段階です。まず社会福祉協議会に相談(申請)をします。次に、生活の状況と希望する援助の内容を確認したうえで、この事業の契約内容について判断できる能力があるかの判定が行われます。対象になると判断された場合、本人の意向を確認しながら、援助の内容や実施の頻度を決めた「支援計画」が作られ、契約を結びます。支援計画は、必要な援助の内容や判断能力の変化に応じて定期的に見直されます。
見守りの仕組みも制度の中に組み込まれています。契約内容や本人の判断能力を確認する「契約締結審査会」と、適正な運営を監督する第三者的な機関である「運営適正化委員会」が置かれていて、安心して使えるようにしてあると厚生労働省は説明しています。お金を預ける話なので、ここを知っておくと踏み出しやすくなると思います。
生活費が月末に足りなくなる原因が固定費にあるなら、家計を立て直すなら、食費より先に固定費から見てください。一時的にお金が必要なら生活福祉資金という貸付もあります。生活保護を受けながら貯蓄がどこまで認められるかは生活保護と預貯金・保険に、担当者とのやりとりはケースワーカーとのつきあい方に書きました。
この事業の相談は、お住まいの市町村の社会福祉協議会が受け付けています。横浜市で暮らしや仕事のことにお困りなら、私たちにも無料の相談前チェックからお声がけください。どこに繋ぐのが早いかを一緒に考えます。
出典
・事業の目的と実施主体(都道府県・指定都市社会福祉協議会、窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等)、対象者の2つの要件、援助の内容(福祉サービスの利用援助・苦情解決制度の利用援助・行政手続に関する援助、日常的金銭管理、定期的な訪問による生活変化の察知)、手続きの流れと支援計画、契約締結審査会と運営適正化委員会、利用料(訪問1回あたり平均1,200円、初期相談等と生活保護受給世帯は無料)、相談は市町村の社会福祉協議会で受け付けること:厚生労働省「日常生活自立支援事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/chiiki-fukusi-yougo/index.html(確認日2026年10月5日)


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