過去に生活保護を受けていた方へ|保護費の追加給付、申出受付が始まりました

日本の赤い郵便ポスト。生活保護費の追加給付は郵送での申出が必要 制度・お金
出典:Pixabay(商用利用可・クレジット表記不要)

「生活保護はもう終わっているから、自分には関係ない」。そう思って読み飛ばされてしまいそうな話ですが、今回はむしろ、いま受けていない方にこそ関わります。しかも、黙っていると受け取れません。

何があったのか

厚生労働省は2026年(令和8年)7月17日、生活保護費の追加給付について、現在は生活保護を受けていない世帯からの申出受付期間を発表しました。受付は2026年8月1日から2027年(令和9年)7月31日まで。申出先は、当時生活保護を受けていた自治体です。

きっかけは2025年(令和7年)6月27日の最高裁判決でした。2013年(平成25年)から3年かけて行われた生活扶助基準の引き下げのうち、いわゆる「デフレ調整」について、最高裁は厚生労働大臣の判断の過程と手続に「過誤、欠落があった」と指摘し、違法と判断しています。

これを受けて厚生労働省は専門委員会での検討(報告書は2025年11月に取りまとめ)を経て、従来の水準と新たな水準との差額を追加給付することを決めました。

かみくだくと、こういうことです

生活保護のうち、食費や光熱費にあたる部分を「生活扶助」といいます。その基準額が2013年から段階的に下げられました。裁判所は、その下げ方の決め方に問題があったと判断した。だから下げすぎていた分を後から払い直す、というのが今回の追加給付です。

対象は大きく二つに分かれます。

ひとつめは、2013年(平成25年)8月から2018年(平成30年)9月までの間に生活保護を受けたことがあるすべての世帯。この期間に一日でも受けていれば、まず対象と考えて構いません。

ふたつめは、2018年10月から2026年(令和8年)3月までの間に受けていた世帯のうち、一定の条件にあてはまる方です。一定期間入院・入所していた方、障害者加算が算定されていた方、毎年12月に支給される期末一時扶助費が算定された世帯などが挙げられています。

金額は、生活扶助基準に一定率(対象期間に応じて0.8%、1.6%、2.4%)を上乗せした「新たな水準」と、実際に支給されていた「従来の水準」との差額として計算されます。

手続きは、いま受けているかどうかで分かれます

・現在も生活保護を受けている世帯 … 原則として申出は不要です。2026年7月以降、順次支給されています。

・現在は受けていない世帯 … 当時の世帯主から自治体へ申し出る必要があります。これが8月1日に始まった受付です。

対象になる方にとって、何が良くなるか

まず、過去に減らされた分が現金で戻ってきます。金額の大小はありますが、生活扶助の複数年分の差額ですから、世帯人数や受給期間によってはまとまった額になります。

もうひとつ大きいのが、この追加給付は収入認定の対象にならないと厚生労働省が明示している点です。つまり、いま生活保護を受けている方が追加給付を受け取っても、そのぶん保護費が減らされることはありません。過去の清算として、そのまま手元に残ります。

相談先も用意されています。厚生労働省が「最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付相談センター」(フリーダイヤル 0120-179-445、平日9時〜17時。8月から10月は土日祝も対応)を設けているほか、自治体側にも専用窓口が置かれている例があります。たとえば横浜市は追加給付コールセンター(0120-593-264、9時〜19時、土日祝を除く)を開設しています。

注意しておきたいこと

自動では届きません。現在受けていない世帯は、申し出なければ支給されません。ここが今回いちばん大事な点です。

締切があります。2027年7月31日まで。一年あると思うと長く感じますが、当時の自治体を調べ、書類をそろえ、という段取りを踏むと、案外あっという間です。

申出先は「当時の自治体」です。引っ越していれば、いま住んでいる市区町村ではなく、生活保護を受けていた自治体に連絡することになります。複数の市で受けていた場合は、それぞれに確認が必要です。

亡くなった方は対象になりません。厚生労働省の相談センターでは、亡くなられた方は追加給付の対象とならず、故人を除いた現在の世帯員分が支給される、という説明がされています。

受付方法は自治体によって違います。横浜市の場合、2026年2月28日までに保護が廃止された世帯は8月1日から郵送とオンラインで受け付け、2026年3月1日以降に廃止された世帯は利用していた区の生活支援課に相談する、という整理になっています。同じ制度でも入口が分かれるので、必ずご自身の自治体の案内を確認してください。

現場から見て、課題だと感じること

制度そのものは救済の趣旨に沿ったものだと受け止めています。そのうえで、届き方には不安が残ります。

第一に、申出制であること。生活保護を受けていた時期があり、いまは受けていない方は、住まいも連絡先も変わっていることが少なくありません。そもそも「追加給付という制度がある」と知る手段がなければ、期限は静かに過ぎていきます。私たちの相談現場でも、携帯が止まったまま、郵便の転送も切れたまま、という方に何度もお会いしてきました。行政からの通知が最も届きにくい層と、今回の対象者は重なっていると考えられます。

第二に、手続きの負担。当時の自治体を思い出し、連絡し、必要書類をそろえる。この一連の作業は、体調や生活の状態によっては簡単ではありません。とくに複数の自治体をまたいで受給していた方の負担は小さくないと思われます。

第三に、金額の受け止め方。差額の上乗せ率は0.8%から2.4%です。当時の生活を思えば十分とは言い切れない、という声もあると考えられます。ただ、金額の多寡にかかわらず、受け取る権利がある方に確実に届くことが、まずは大事だと私たちは考えています。

心当たりのある方は、まず電話一本から

「2013年から2018年のあいだに、生活保護を受けていた時期があったかもしれない」。その心当たりだけで十分です。まずは厚生労働省の相談センター(0120-179-445)か、当時お住まいだった自治体の福祉担当課に確認してみてください。対象かどうかの判断を、ご自身でつける必要はありません。

当時の自治体がわからない、書類の書き方が不安、そもそも誰に聞けばいいのかわからない。そういうときは、私たちにもご相談ください。NPO法人 暮らし就労支援協会は、住まい仕事の支援を通じて、生活保護の申請や制度の利用に同行してきました。今回の追加給付についても、窓口の調べ方から一緒に確認します。

いま現在の暮らしが苦しい、という方もいらっしゃると思います。追加給付は過去の清算であって、いまの生活を支える制度ではありません。家賃が払えない、仕事が続かない、そうした「いま」の困りごとは、生活保護の申請や他の制度で対応できることがあります。無料の相談前チェック、またはメール(info@npokurashi.com)からお気軽にどうぞ。

出典

※本記事は上記の公的発表をもとに、当会が要約・解説したものです。制度の詳細や個別の取扱いは、必ず各自治体の案内をご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました