無料低額宿泊所とはどういう場所か|住まいがないときに案内される施設の見分け方

集合住宅の外観 地域別

「役所で施設をすすめられたのですが、入らないと生活保護は受けられないのでしょうか」。住まいがないまま申請に行った方から、この質問をよく受けます。名前を聞くと、たいていは無料低額宿泊所です。

その場で検索すると、あまり良くない話のほうが先に出てきます。それで怖くなって、行き場のないまま連絡が途絶えてしまう。私たちがいちばん避けたいのは、その展開です。

制度上どういう施設なのか、2020年に何が変わったのか、入る前に何を聞いておけばよいのか。法令と厚生労働省の通知から順に書きます。住まいがない状態からの申請そのものは家がなくても生活保護は受けられるのかにまとめてあります。

社会福祉法に名前が書かれている事業です

無料低額宿泊所は俗称ではありません。社会福祉法が第二種社会福祉事業のひとつとして挙げている、法律上の事業です。

社会福祉法 第2条第3項第8号

生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業

厚生労働省の解釈通知は、この施設の役割を「直ちに単身での居宅生活が困難な者に対し、居宅生活が可能な状況になるまでの間の一時的な居住の場を提供する」ものと説明しています。あわせて、居宅と社会福祉施設との中間的な居住の場、という言い方もしています。

つまり、制度が想定しているのは通過点です。ずっと住み続ける場所としては設計されていません。ここを最初に押さえておいてください。

2020年4月に、届出と最低基準が入りました

この分野が長く問題視されてきたのは事実です。国もそれを前提に法律を直しました。平成30年法律第44号による社会福祉法・生活保護法の改正で、規制が強化されています。厚生労働省自身が指導指針のなかで「不適切な事業運営を行っている事業所の存在も指摘されていた」と書いています。

変わった点は三つです。

一つめ。事業を始めるときの届出(法第68条の2)。しかも、届け出ていなければ規制の外に置かれる、というものではありません。指導指針は、事業の範囲に該当する事業を行っていれば「届出の有無にかかわらず、無料低額宿泊所として扱う」としています。無届けの施設にも調査は入ります。

二つめ。設備と運営の最低基準です。都道府県・指定都市・中核市が条例で定めることになり(法第68条の5第1項)、国が標準として示したのが「無料低額宿泊所の設備及び運営に関する基準」(令和元年厚生労働省令第34号)。2020年4月1日から動いています。

三つめ。基準に適合しないときの改善命令(法第71条)と、命令に従わないときの事業の制限・停止(法第72条)。制限停止命令を無視して事業を続ければ、法第131条の罰則があります。

省令が定める居室の基準は、かなり具体的です。一の居室の定員は一人(生計を一にする配偶者その他の親族と同居する場合などは例外)。床面積は収納設備を除いて7.43平方メートル以上、地域の事情によりこれにより難い場合でも4.95平方メートル以上。居室ごとに堅固な扉を設け、間仕切壁は天井まで達していること。解釈通知は、簡易なパネルやベニヤ板で室内を仕切っただけのものは認められないと明記しています。

大部屋をカーテンや薄板で区切っただけ、という以前よく指摘された形は、制度の上では解消されているはずのものです。「はず」と書いたのは、個々の施設が実際どうかまでを、この記事で確認することはできないからです。だから次の章で、聞くべきことを書きます。

日常生活支援住居施設という区分もあります

案内される施設には、もう一つの呼び名が付いていることがあります。日常生活支援住居施設です。

これは無料低額宿泊所のうち、入居者ごとに個別支援計画をつくり、それにもとづいて日常生活上の支援を行う施設として、必要な職員を配置するなどの要件を満たすものを、都道府県知事等が認定する仕組みです。生活保護法第30条第1項が根拠で、要件は令和2年厚生労働省令第44号に定められています。こちらも2020年4月から始まりました。単独では居宅での生活が難しい方に、支援付きの住まいを用意するための区分だと考えてください。

案内された施設がどちらなのかは、調べれば分かります。自治体が一覧を公開しています。

届出施設の一覧(横浜市・神奈川県)

横浜市「無料低額宿泊所・日常生活支援住居施設一覧」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/seikatsu/homeless/muteinitijyuitiran.html
神奈川県「無料低額宿泊所(日常生活支援住居施設)について」(指定都市・中核市を除く県所管分)
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/r6w/cnt/f5927/p16888.html

入る前に、利用料の内訳を聞いてください

ここがいちばん大事なところです。省令第16条は、施設が受け取れる利用料の費目を限定しています。あいまいな名目でお金を取ることと、不当に高い料金設定を防ぐためです。

費目 算定の基礎になるもの
食事の提供に要する費用 食材料費、調理を行う職員の人件費、調理器具の費用など。食事を求めない人に対応できるよう、1食あたりの単価を設定することになっています
居室使用料 建物の整備・改修費、修繕費、管理の人件費、保険料、その物件の家賃・地代に相当する額
共益費 共用部分の清掃、備品の整備など
光熱水費 実費に相当する額
日用品費 日用品の購入・配送などの調達に要する費用
基本サービス費 状況把握や軽微な生活上の相談を行う職員の人件費、事務費など

この表から、覚えて帰ってほしいことが二つあります。

ひとつ。居室使用料は「近隣同種の住宅との均衡を失しない範囲」とされ、解釈通知はその具体的な基準を、生活保護の住宅扶助特別基準の金額以下と示しています。横浜市の単身世帯なら5万2千円が住宅扶助の上限です(住宅扶助の上限の記事)。もうひとつ。居室使用料のほかに、敷金等の入居一時金を求めてはならない、とも書かれています。

契約についても決まりがあります。重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得たうえで契約を結ぶこと。しかも、居室の利用に係る契約と、食事や日用品などそれ以外のサービスに係る契約を、それぞれ文書で締結することになっています。契約期間は1年以内(居室が賃貸借契約の場合は1年)。入居者が望まないサービスの利用を強制してはならない、という一文も入っています。

お金の管理は本人が行うのが原則です。第26条は、金銭の管理に支障がある人が本人の希望で頼む場合に限って施設の管理を認めており、解釈通知は、入居者全員と一律に金銭管理契約を結ぶことは認められないと明記しています。管理してよいのは月々の生活費として必要な額まで。本人が解約を申し入れたら、解約して返さなければなりません。

入る前に聞いてよいこと

  • 毎月の利用料の内訳と、保護費から手元にいくら残るのか
  • 居室は個室か。間仕切りは天井まであるか
  • 契約書と重要事項を書いた書面をもらえるか。契約期間はいつまでか
  • 出るときの手続きと、いつごろまでの利用を想定しているか
  • お金の管理を施設に頼むかどうかは、自分で選べるのか

これらは失礼な質問ではありません。省令が施設側に義務づけていることを、確認しているだけです。答えを渋られたときは、その反応自体が判断材料になります。

国が「これは不当だ」と挙げていること

2020年3月の指導指針には、指導や改善命令を経ずに事業の制限停止命令を行うべき場合として、次のような行為が並んでいます。契約に基づかない曖昧な名目での不当な料金の受領。強制的な契約の締結や、不実の告知、不利益となる事実の不告知。入居者からの契約解除を認めないなど、不当な契約条項を盛り込んだ契約。契約に基づかない、または強制的な金銭管理。

これは施設を疑うために引用しているのではありません。裏を返せば、こうしたことが起きたときに持っていく先がある、ということです。届出先の自治体には調査と命令の権限があります。おかしいと感じたら、担当のケースワーカーに、そして施設を所管する自治体の窓口に伝えてください。伝え方に迷ったらケースワーカーとの付き合い方の記事もどうぞ。

アパートに移る道は閉じていません

一時的な居住の場、という位置づけからも分かるとおり、施設に入ったらそこで終わりではありません。省令は、契約期間が満了する前に更新について入居者の意向を確認し、関係機関と継続の必要性を協議することを求めています。居宅での生活に移れると判断されたときは、そちらへつなぐ、という組み立てです。

費用の面でも道はあります。厚生省社会局長通知の住宅費の項は、保護開始時に安定した住居のない人が住宅の確保にあたって敷金等を必要とする場合、住宅扶助の特別基準額に3を乗じた額の範囲内で認定する、としています。家賃そのものは住宅扶助でまかなうことになります。転居にかかるお金の全体像は引っ越し費用の記事に書きました。

ですから「アパートに移りたい」と福祉事務所に伝えることは、制度の枠から外れたわがままではありません。伝えたうえで、いつごろを目標にするのか、何が整えば移れるのかを詰めていく話になります。保証人のことが心配なら居住支援法人の記事もあわせて読んでみてください。

施設に入ることが申請の条件なのか

ここは慎重に書きます。生活保護法第30条第1項は「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする」と定めています。居宅が原則です。そのうえでただし書きが、これによることができないとき、保護の目的を達しがたいとき、または被保護者が希望したときは、救護施設・更生施設・日常生活支援住居施設その他の適当な施設に入所させることができる、としています。そして第2項に、この規定を「被保護者の意に反して、入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならない」と書かれています。

条文はそうなっています。とはいえ、居宅で保護できるかどうかを判断するのは福祉事務所です。所持金がなく、その日のうちにアパートが決まるわけでもない状況で、施設を経由する提案がなされるのには現実的な理由があることも多い。

だから私たちは、「断ってかまいません」とも「入るしかありません」とも言いません。言えるのは、なぜ居宅ではなく施設なのか、その理由を説明してもらってよい、ということです。納得できないまま書類に署名しないでください。申請そのものの進め方は申請の流れの記事、窓口で止められたときは断られたときの記事に書いています。

ひとりで決めなくてかまいません

私たちは横浜市西区のNPO法人で、住まいと仕事の相談をお受けしています。当会は宅地建物取引業者ではないので物件の仲介はしませんし、居住支援法人の指定もまだ受けていません。そこは正確に書いておきます。

できるのは、いま案内されている施設の契約内容を一緒に読むこと。福祉事務所に何をどう聞けばいいかを整理すること。そのあとアパートに移るまでの段取りを一緒に考えること。実際、施設に入ってから相談に来られる方も少なくありません。入ったあとでも遅くはありません。

施設の話が出てから決めるまでの時間は、たいてい長くありません。無料の相談前チェックに、いま言われている内容を書けるだけ書いて送ってください。折り返しご連絡します。

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