生活保護の「停止」と「廃止」はどう違うのか|収入が増えたとき、何が起きるのか

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「働き始めたら、生活保護を切られますよね」。相談の席でこの一言が出ると、そこから先の求人の話が止まります。せっかく決まっても翌月から家賃が払えなくなるのではないか、それなら動かないほうが安全ではないか、と。

制度は、そこまで乱暴にはできていません。収入が増えたときにまず検討されるのは「停止」で、その状態が続くと見込まれてはじめて「廃止」になります。この二つは別物です。

どこに線が引かれているのか、法律と厚生労働省の通知から順に書いていきます。

その前に。稼いだ分がまるごと引かれるわけではありません

停止と廃止の話に入る前に、ここを外すと全部ずれます。働いて得た収入は、額面がそのまま保護費から差し引かれるのではありません。勤労控除という仕組みがあります。

厚生事務次官通知は、勤労収入を得ている人について「勤労に伴う必要経費として別表『基礎控除額表』の額を認定すること」としています。控除額は収入の区分ごとに表で決まっているので、この記事で「いくら残ります」と一律の数字は出せません。自分の収入額だといくらになるのかは、担当のケースワーカーに聞くのが確実です。

基礎控除のほかに、二つあります。新規に就労したため特別の経費を必要とする人には月額12,900円、20歳未満の人には月額11,900円(単身者などは対象外)。新規就労控除のほうは、はじめて継続性のある職業に就いた月から6か月間に限られます。

もう一つ、知られていない取扱いがあります。社会局長通知には、保護を受けている人が新たに就職した場合で、その収入を当月の収入として計上することが不適当と認められる場合に限り、翌月の収入として計上してよい、と書かれています。就職しても給料日は先、という一か月の穴を想定した規定です。働きながら受給する場合の記事にも書きましたが、働くことと受給することは、そもそも両立します。

停止は、資格が残ったまま支給だけが止まること

根拠になる条文は短いものです。

生活保護法 第26条(保護の停止及び廃止)

保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。

法律は「停止又は廃止」と並べているだけで、どちらを選ぶかは書いていません。その基準は、厚生省社会局保護課長通知の問12にあります。停止すべき場合として挙げられているのは次の二つです。

一つめ。臨時的な収入の増加や最低生活費の減少で一時的に保護を必要としなくなった場合であって、その後の見込みから判断しておおむね6か月以内に再び保護を要する状態になることが予想されるとき。短期の仕事、一時金、季節的な収入などがここに入ります。

二つめ。定期収入が恒常的に増えたなどで一応保護を要しなくなったと認められるものの、その状態が続くかどうかまだ確実性を欠くため、若干期間、生活状況の経過を観察する必要があるとき。

停止のときは、その後の最低生活費と収入の見込みから停止期間をあらかじめ定めることになっています。原則として日を単位として、です。無期限に宙ぶらりんにされるものではありません。

停止中も、福祉事務所は生活状況の経過を把握し、必要に応じて助言指導を行います。同じ課長通知は、停止前に保有を認められていた預貯金等を停止中も持っていてよい、としています。制度の中に居続けている状態だ、と考えると分かりやすいと思います。

廃止は、受給者ではなくなること

同じ問12が、廃止すべき場合として挙げているのはこの二つです。

一つめ。定期収入の恒常的な増加や最低生活費の恒常的な減少により、以後特別な事由が生じないかぎり保護を再開する必要がないと認められるとき。二つめ。収入の臨時的な増加などにより、以後おおむね6か月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められるとき。

「おおむね6か月」という同じ言葉が、停止と廃止の両方に出てきます。6か月以内に戻ってきそうなら停止、6か月を超えて必要なさそうなら廃止。ここが分かれ目です。

廃止されると、生活保護制度下の制約を受けなくなります。課長通知にそう書かれています。自由になる、とも言えますし、支えが外れる、とも言えます。そして、もう一度必要になったときは新規の申請からやり直しになります。生活保護は申請にもとづいて開始するのが原則だからです(法第7条)。停止からの再開とは、かかる手間が違います。

どちらになるかを決めるのは福祉事務所です

ここは正直に書きます。停止か廃止かを決めるのは保護の実施機関、つまり福祉事務所です。「おおむね6か月」は判断の目安であって、あなたの収入が今後どう推移すると見るか、その見立て次第で結論は変わります。運用の幅は自治体によっても違います。

ですから、私たちがここで「あなたの場合は停止で済みます」と言うことはできません。言えるのは、決定は書面で通知されるということ(法第26条)、そして納得できない処分には審査請求という道があるということです。届いた通知書には、その手続きの説明が書かれています。ケースワーカーとの付き合い方の記事にも書きましたが、通知書は捨てないでください。

収入は必ず申告してください

法第61条は、収入や支出その他生計の状況に変動があったときは、すみやかに届け出なければならないと定めています。義務です。

隠して受給した場合、法第78条により、費用の全部または一部を徴収されるうえに、その額に40%を乗じた額以下の金額まで上乗せして徴収されることがあります。急迫の場合等で資力があるのに保護を受けたときの返還は法第63条です。

逆から見てください。勤労控除は、申告した人にだけ働きます。黙っていて後から発覚すれば、控除どころか上乗せの徴収です。申告すれば控除があり、収入が増えれば停止か廃止かの検討に入る。どちらが得かは考えるまでもありません。臨時収入やポイントの扱いに迷う方はポイ活と収入申告の記事もご覧ください。

廃止のときに使える就労自立給付金

安定した職業に就いたことなどで保護を必要としなくなったと認められた人に支給される給付金が、法第55条の4に定められています。就労自立給付金です。

算定方法は令和6年6月18日付の厚生労働省通知で定められていて、保護を必要としなくなったと認められた日が属する月から前6か月間の各月の就労収入額に10%を乗じた額と、基礎額を足したもの。それと上限額を比べて低いほうが支給額になります。上限は単身世帯10万円、複数世帯15万円。下限は3万円、単身世帯なら2万円です。

基礎額の計算はやや込み入っていて、5万円(単身世帯は4万円)から、算定対象期間中に最初に就労収入があった月の翌月から廃止月までの月数に7,500円を乗じた額を差し引いて求めます。自分の場合いくらになるのかは、福祉事務所で確認してください。

もう一つ。法第81条の4は、保護を廃止するにあたって、その人が生活困窮者に該当する場合には、生活困窮者自立支援法にもとづく事業や給付金の情報提供、助言その他適切な措置を講ずるよう努めるものとする、と定めています。廃止は、そこで縁が切れて終わり、という設計にはなっていません。

働き始める前に、一度相談してかまいません

就職が決まってから慌てて申告するより、応募の段階でケースワーカーに話しておくほうが、話は早く進みます。就職が決まったときの手続きの記事や、職業訓練の記事も参考にしてください。受給から抜ける道筋そのものはこちらの記事にまとめています。

私たちは横浜市西区のNPO法人で、住まい仕事の相談をお受けしています。働き始めたいけれど保護がどうなるか怖い、という段階のご相談も少なくありません。制度の説明をして、福祉事務所に何をどう伝えるかを一緒に整理するところまではお手伝いできます。

まずは無料の相談前チェックに、いまの状況を書けるだけ書いて送ってください。折り返しご連絡します。

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