部屋探しの相談を受けていると、「緊急連絡先を頼める人がいない」という一言で話が止まることがよくあります。家族と長く連絡を取っていない、頼れる親戚がもういない、友人に迷惑をかけたくない。理由は人それぞれで、誰かの落ち度ではありません。
なぜこの欄がそこまで重く扱われるのかは緊急連絡先がいないと部屋が借りられないのはなぜかに書きました。この記事では、頼める人がいないときに、どこから当たっていけばいいかの順番だけを書きます。
当たる順番は、お金のかからないところから
先に結論を書きます。緊急連絡先の代行サービスにお金を払うのは、最後にしてください。代行そのものが悪いわけではありません。ただ、無料で当たれるところを試す前に契約してしまうと、あとから「親戚で足りた」「勤務先でよかった」と分かることがあります。手元のお金が少ないときほど、この順番が効いてきます。
当たる順番は、ご家族・ご親族、勤務先、友人・知人、福祉や居住支援の窓口、有料の代行です。この順番で誰もが見つかるわけではありません。見つからなかったときの動き方も、あとで書きます。
ご家族・ご親族には、頼み方を変えてみる
疎遠になった家族に連絡するのは気が重いものです。ただ、一度断られた方の話を聞くと、頼んだ中身が「保証人になってほしい」だったことが少なくありません。緊急連絡先は保証人ではありません。家賃を代わりに払う約束ではなく、何かあったときに連絡がつく先です。高齢者住宅財団の家賃債務保証のQ&Aにも、緊急連絡先は保証人ではないと書かれています。
「お金のことは頼まない。管理会社から電話があったら出てほしい、それだけ」。こう伝えると受けてもらえることがあります。親や兄弟だけでなく、いとこ、おじ・おばまで広げて考えてみてください。
生活保護を申請する方は、福祉事務所が親族に連絡する扶養照会と混同しやすいのですが、これとは別の話です。扶養照会のことは扶養照会を止めるにはにまとめています。
勤務先と、友人・知人
働いている方は、勤務先も候補になります。国土交通省の賃貸住宅標準契約書の注意点には、緊急時の連絡先の例として勤務先や親戚の住所が挙がっています。親族に限るとは書かれていません。上司や総務の方に事情を話してみる価値はあります。
友人や知人はどうか。国の調査(令和5年度の速報値)では、緊急連絡先を求める保証会社のうち、親族以外の個人を認めるところが8割近くありました。財団のQ&Aも、18歳以上なら友人・知人でもよいとしたうえで、事前に同意を得るよう求めています。
この「事前に」が抜けると困ったことになります。名前だけ書いて本人に話していないと、確認の電話が行ったときに「聞いていない」と言われ、審査が止まりかねません。頼むときは、どんな連絡が行く可能性があるかまで話しておいてください。どこまで認めるかは保証会社や管理会社によって違うので、友人なら必ず通るとは言えません。
福祉の窓口と、居住支援法人に相談する
個人で見つからないときは、支援の窓口に入ってもらう道があります。生活保護を受けている方や申請中の方は、担当のケースワーカーに「緊急連絡先が見つからず、部屋が決まらない」と伝えてください。ケースワーカーに何をしてもらえるかは自治体や福祉事務所の扱いによるため、この記事では書きません。ただ、支援につながっていること自体が、不動産会社や保証会社に事情を説明する材料になることがあります。保護を受けていない方は、自治体の自立相談支援の窓口が入り口です(「住むところがない」と福祉の窓口で言っていい)。
もうひとつが居住支援法人です。住宅セーフティネット法に基づいて都道府県が指定する法人で、入居の相談や見守りなどを行っています。国土交通省が一覧を出していて、令和8年6月30日時点で1,196法人が載っています。財団のQ&Aでも、居住支援法人のように信頼性が確認できる法人なら緊急連絡先にしてよいとされています。
気をつけたいのは、居住支援法人がみな同じことをしているわけではない点です。国の資料にも、すべての業務を行わなくてもよいと書かれています。一覧からお住まいの地域を対象にしている法人を探し、緊急連絡先の相談に乗ってもらえるか電話で聞いてみてください。地域によっては、自治体と不動産の団体、支援団体でつくる居住支援協議会が相談を受けています。
有料の代行は、いちばん最後に
ここまで当たっても見つからなければ、有料の代行を考える段階です。契約の前に確かめてほしいことは緊急連絡先を「代行」で買う前に、確かめてほしい4つのことに書いたので、読んでから決めてください。
もうひとつ、代行を使えば審査が通るとは限りません。法人を緊急連絡先として認めるかどうかは保証会社によって違い、国の調査では認めるところは3割ほどでした。保証会社が法人に何を求めているかはこちらの記事にあります。
今日、不動産会社に聞いてほしいこと
順番を全部回すには時間がかかります。その前に、今日できることがあります。気になる部屋の不動産会社に、申込書を出す前に「緊急連絡先を頼める人がいない」と伝え、その部屋はどの保証会社を使うのか、緊急連絡先は誰なら認められるのかを聞くことです。
黙って申込書を出して落ちるより、先に聞いたほうが早く済みます。勤務先でいいのか、友人でいいのか、法人ならいいのか。答えが分かれば、上の順番のどこから当たればいいかが絞れます。認められる範囲が狭ければ、別の保証会社を使う部屋がないかも聞いてみてください。
それでも行き詰まったら、私たちに相談してください。どこに聞けばいいか分からない段階でもかまいません。住まいの相談のページか、無料の相談前チェックから状況を送ってもらえれば、こちらから連絡します。メールは info@npokurashi.com です。当会の見守り・自立支援サポートとあわせて緊急連絡先をお受けできる場合もありますが、ご事情や審査によってはお受けできないこともあります。入居できるかを判断するのは貸主・管理会社・保証会社で、生活保護を受けられるかどうかを決めるのは福祉事務所です。運用は自治体や会社によって違います。
出典
・緊急時の連絡先の例(勤務先、親戚の住所など):国土交通省「賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版・家賃債務保証業者型」《作成にあたっての注意点》頭書(5)関係https://www.mlit.go.jp/common/001479824.pdf(掲載ページ:国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html)
・緊急連絡先は保証人ではないこと、18歳以上なら友人・知人も可、居住支援法人等の法人も可、事前の同意:一般財団法人高齢者住宅財団「家賃債務保証 よくあるご質問」Q16https://www.koujuuzai.or.jp/service/rent_guarantees/faq-rg/
・保証会社が認める緊急連絡先(親族以外の個人79.4%、法人30.2%。令和5年度国土交通省調査の速報値):厚生労働省・国土交通省・法務省「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関するこれまでの議論の整理(中間とりまとめ素案)参考資料」資料3 p.24https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001147836.pdf
・居住支援法人の指定と業務:国土交通省「住宅確保要配慮者居住支援法人について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr7_000026.html、「居住支援法人制度の概要」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001913481.pdf
・居住支援法人の一覧(令和8年6月30日時点、1,196法人):国土交通省「居住支援法人一覧」https://www.mlit.go.jp/common/001465934.pdf
・居住支援協議会:国土交通省「居住支援協議会」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000019.html
(いずれも確認日2026年10月27日)


コメント