10月6日、生活保護の「基準」を決める会議が開かれました
厚生労働省の審議会のひとつに、社会保障審議会 生活保護基準部会があります。生活保護で支給される生活費の水準が妥当かどうかを、統計を使って確かめる専門家の会議です。
その第62回が、2026年10月6日に開かれました。議題は2つです。
- 生活扶助基準の「体系」の検証について
- 児童養育加算・母子加算・冬季加算・期末一時扶助の検証方法について
生活保護の基準は、5年に1度行われる国の大きな家計調査(全国家計構造調査)のデータを使って、定期的に検証されています。今回使われているのは、2024年(令和6年)に行われた調査です。前回の検証報告は2022年12月にまとめられました。
厚生労働省が2025年6月に示したスケジュール案では、2026年7月から12月ごろにかけて検証を行うとされています(案なので、変わることがあると明記されています)。いま、そのちょうど途中にあたります。
「体系」の検証とは何か
生活保護の生活費(生活扶助)は、全員が同じ額ではありません。
- 年齢(子ども、働く世代、高齢の方)
- 世帯の人数
- 住んでいる地域(「級地」という6段階の区分。横浜市などの大都市が最も高い区分)
この3つによって額が変わります。「体系の検証」とは、この差のつけ方が、実際の暮らしにかかるお金の差と合っているかを確かめる作業です。
確かめ方は、生活保護を受けていない世帯のうち、年収が下から1割に入る世帯の支出を分析し、年齢・人数・地域によってどれだけ支出が違うかを計算する、というものです。前回(2022年)と同じ方法を基本にしています。
10月6日の会議では、この計算の結果が示されました。資料には、データの数が限られていることなどから、はっきりした差が出なかった項目があることも、論点として書かれています。たとえば地域の差については、本来は高いはずの都市部の区分のほうが、低く計算されるところがあったとされています。
この結果をそのまま基準に反映するのか、どう扱うのかは、これから部会で議論されることになっています。
4つの加算をどう確かめるか
同じ会議で、生活扶助に上乗せされる4つの加算について、検証の方法が示されました。ここは、いま保護を受けている方の暮らしに直接かかわる部分です。
冬季加算 ― 冬の暖房費のための上乗せ
冬季加算は、冬に増える光熱費のために、地域ごとに決められた額を上乗せするものです。寒い地域ほど額が大きくなっています。
今回示された方法は、2021年から2025年の家計調査を使い、低所得の世帯で、10月・11月の平均と比べて冬に光熱費がどれだけ増えるかを地区ごとに計算して、いまの加算額と比べる、というものです。
あわせて、次の2つも確かめる方針です。
- 夏(7月〜9月)に増える支出も確認する
- 低所得の世帯が住んでいる住宅の築年数などの特徴も確認する
会議では委員から、「低所得の世帯や生活保護を受けている世帯は、断熱の性能や築年数が一般の世帯と大きく違う可能性がある」という意見が出ていました。
期末一時扶助 ― 12月の上乗せ
期末一時扶助は、年末年始に増える食費などのために、12月に支給されるものです。
資料によると、低所得の世帯の支出は、10月・11月の平均と比べて12月に2割ほど増えています。今回は、冬季加算と重なる光熱費を除いたうえで、12月に増える支出を確かめ、いまの額と比べる方針です。
母子加算 ― ひとり親の世帯への上乗せ
母子加算は、名前とは違い、父子家庭など、ひとり親の世帯全般が対象です。会議では、名前を「ひとり親加算」のような中立的なものに変えてはどうか、という意見も出ていました。
検証は、ひとり親の世帯が、ふたり親の世帯と同じくらいの暮らしをするのに、どれだけ余分にお金がかかるかを計算する考え方を基本に、今回は生活扶助の本体の検証と方法をそろえる方向で検討されています。
児童養育加算 ― 子どものための上乗せ
児童養育加算は、子どものいる世帯への上乗せです。今回は、塾や習い事、部活動の道具、交通費などの「学校外の活動」にかかるお金に着目し、低所得の世帯と中くらいの所得の世帯の差を調べる方針です。
委員からは、加算がきちんと子どものために使われるよう、ほかの保護費と分けて振り込む、名前を中身に合わせて変える、といった意見も出ていました。
いま決まっていること、決まっていないこと
ここは、誤解のないようにはっきり分けておきます。
決まっていること(10月6日の会議で示された事実)
- 生活扶助の基準と4つの加算を、2024年の家計調査などのデータで検証している最中であること
- 加算ごとに、どういう方法で確かめるか
まだ決まっていないこと
- 基準や加算の額が、上がるのか、下がるのか、変わらないのか
- 見直すとしたら、いつからか
- 加算の名前が変わるかどうか
10月6日の資料には、新しい金額は1つも書かれていません。 「冬季加算がなくなる」「母子加算が減る」と決まったわけではありませんので、そうした話を見聞きしても、慌てないでください。
メリット:暮らしの実態に合わせて確かめ直す機会
5年に1度の検証は、基準が実際の暮らしとずれていないかを、データで確かめ直す機会です。
とくに、夏の支出の増え方や、低所得の世帯が住む家の断熱・築年数まで確かめる方針が示されたことは、意味があると考えます。古くて寒い、あるいは暑い部屋に住んでいる方ほど、冷暖房にお金がかかるからです。
また、子どもの学校外の活動や、ひとり親であるがゆえにかかる費用に光を当てて検証することは、子どもの貧困への対策という面でも大切です。
注意点:比べる相手が「低所得の世帯」であること
一方で、知っておいていただきたい点があります。
生活扶助の本体や加算は、主に生活保護を受けていない低所得の世帯の支出と比べて確かめられます。これには、受けている人と受けていない人の公平を保つという理由があります。
ただ、その低所得の世帯が、本当は必要なのにお金がなくて我慢している支出があれば、その我慢の分は数字に出てきません。比べる相手の暮らしが苦しくなれば、それに合わせて基準も低く出やすい、という構造です。
会議でも、委員から「低所得の世帯では、お金が足りないために必要な学校外の活動が十分にできていない可能性がある」「平均だけでなく、支出の分布も見るべきではないか」という意見が出ていました。
課題:冬の光熱費は「額」より先に「家」で決まる
当会で住まいのご相談を受けていると、生活保護を利用している方の部屋は、家賃の上限の中で探すため、築年数が古く、すきま風の入る部屋であることが少なくありません。同じ気温でも、こうした部屋では暖房が効きにくく、電気代がかさみます。
冬季加算の検証で住宅の特徴も確かめる方針が示されたのは、この点を見ているのだと思います。けれども、加算の額をいくら精密に計算しても、住まいそのものの断熱が悪ければ、光熱費は加算を超えて出ていきます。
制度の見直しには時間がかかります。そのあいだにも、この冬の電気代やガス代の請求は毎月届きます。入ってくる額はすぐには変えられないので、出ていく側の契約を見直すことも、身を守る手段のひとつです。
あわせて読みたい
家計を立て直すなら、食費より先に固定費|削る順番をまちがえない
電気・ガス・通信のように毎月決まって出ていくお金は、一度見直せばその後もずっと効きます。どこから手をつけるかの順番をまとめています。
いま保護を受けている方へ
今回の会議の内容で、いま受け取っている保護費がすぐに変わることはありません。 何か手続きをする必要もありません。
冬季加算や期末一時扶助は、対象となる月の保護費に含まれて支給されます。金額は、福祉事務所から届く保護決定(変更)通知書で確かめられます。分からないことがあれば、担当のケースワーカーに聞いてみてください。
困っている方へ
生活保護の相談・申請は、お住まいの市区町村の福祉事務所(区役所・市役所の生活支援課など)が窓口です。申請は国民の権利で、相談だけでも受け付けてもらえます。
そのうえで、冬を前に光熱費や家賃の支払いが心配、いまの部屋が寒くて暮らしにくい、窓口で何をどう話せばいいか分からない――そうしたことでお困りでしたら、NPO法人暮らし就労支援協会にご相談ください。住まいのご相談と就労のご相談の両方をお受けしています。相談は無料です。
- 相談前チェック(オンライン):https://forms.gle/ppLQBuMz28LHCAtN8
- メール:info@npokurashi.com
- ホームページ:https://www.npokurashi.com/
出典
- 厚生労働省「第62回社会保障審議会生活保護基準部会 資料」(令和8年10月6日開催)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76589.html (2026年10月15日確認)
- 同 資料1「生活扶助基準の体系の検証について」https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001756312.pdf (2026年10月15日確認)
- 同 資料2「児童養育加算・母子加算・冬季加算・期末一時扶助の検証方法について」https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001756313.pdf (2026年10月15日確認)
- 厚生労働省「今後の生活保護基準部会のスケジュール(案)」(第52回部会 資料5・令和7年6月24日)https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001507607.pdf (2026年10月15日確認)
監修:NPO法人暮らし就労支援協会


コメント