職場での障害者虐待、8割は「お金」でした|最低賃金を下回る給料も虐待にあたります

仕事・自立

厚生労働省が9月11日、「令和7年度使用者による障害者虐待の状況等」を公表しました。障害のある人を雇っている事業主や職場の上司による虐待を、全国の労働局がまとめたものです。

虐待と聞くと、殴る、怒鳴るといった場面を思い浮かべる方が多いと思います。ところが、実際に虐待と認められたもののうち8割以上は「経済的虐待」、つまりお金の問題でした。その多くは、最低賃金を下回る給料です。

何があったのか

障害者虐待防止法にもとづいて、厚生労働省は毎年度この結果を公表しています。令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の数字は次のとおりです。

項目 令和7年度 前年度比
通報・届出があった事業所 1,663事業所 4.4%増
通報・届出の対象になった障害者 1,953人 6.9%増
虐待が認められた事業所 421事業所 3.0%減
虐待が認められた障害者 610人 6.4%減

認められた虐待を種類別に見ると、経済的虐待が521人で83.1%を占めます。心理的虐待は62人(9.9%)、身体的虐待は31人(4.9%)でした(一人に複数の種類が認められた場合は重ねて数えています)。

働き方ではパート・アルバイトが272人(44.6%)で最も多く、正社員の203人(33.3%)を上回りました。障害の種類では精神障害が220人(35.7%)、知的障害が194人(31.4%)です。

「経済的虐待」とは何か

法律の言葉では「障害者から不当に財産上の利益を得ること」などを指します。職場の場合、いちばん多いのは決まった額の給料を払わないことです。

労働局が講じた措置658件のうち、最低賃金法にもとづく指導等が207件ありました。発表資料に載っている事例の一つでは、発達障害のあるパートの方の時給が、地域の最低賃金を1時間あたり約600円下回っていました。労働基準監督署が見回りのなかで見つけ、事業主に差額を払うよう指導しています。

ここで一つ、誤解されやすい点があります。障害があっても、最低賃金は原則としてそのまま適用されます。例外として、事業主が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、個別に減額が認められる制度があります。ただしこの許可は、障害があるというだけでは出ません。障害が仕事に直接、著しい支障を与えていることがはっきりしている場合に限られます。許可を受けていない職場で「障害があるから時給はこれだけ」と言われたら、それは法律違反のおそれがあります。

この発表から分かる、良いこと

給料の未払いや最低賃金割れは、虐待として扱われ、差額の支払いまで指導されるということです。「障害があるのだから仕方ない」と本人や家族があきらめている低い賃金も、制度の上では正されるべきものとして扱われています。

通報・届出の件数は増えています。数字だけでは理由までは分かりませんが、周りの人が気づいて声を上げる動きが広がっている面もあると、私たちは受け止めています。

注意して見ておきたいこと

虐待が認められた事業所の規模を見ると、従業員5〜29人が168事業所(39.9%)、5人未満が70事業所(16.6%)で、30人未満の職場が半分を超えます。業種では医療・福祉が102事業所(24.2%)で最も多く、製造業が87事業所で続きます。支援をする側の業種が最多であることは、重く受け止める必要があります。

また、障害者手帳を持っていない人も対象です。発表資料は、手帳の有無ではなく、障害によって日常生活や社会生活に継続して相当な制限を受けているかどうかで判断すると明記しています。

届け出の段階と、認められた段階で、数字が大きく変わる

課題として挙げたいのは、心理的虐待の扱いです。

通報・届出の段階では、心理的虐待は868人分あり、経済的虐待(997人分)とほとんど変わりません。ところが虐待と認められたのは62人でした。経済的虐待は賃金台帳を見れば確かめられますが、怒鳴られた、わざと聞き取れないように指示された、といった言葉の暴力は、記録が残りにくいものです。認められにくい理由の一つはそこにあると、私たちは考えています。

もし今そういう職場にいるなら、日付と言われた言葉をメモに残しておくだけでも、後で相談するときの助けになります。そして、今の職場にいるしかない、と思い込まないでください。ハローワークは、使用者による虐待の相談先の一つであり、次の仕事を探す場所でもあります。

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相談できるところ

使用者による虐待かもしれないと思ったら、本人でも、家族や同僚でも、次の窓口に伝えることができます。匿名での通報も受け付けられています。

  • お住まいの市区町村の障害者虐待防止センター(障害福祉の担当課に置かれていることが多いです)
  • 都道府県の障害者権利擁護センター
  • 都道府県労働局・労働基準監督署・ハローワーク

給料が最低賃金より低いかどうか分からない、という段階でも大丈夫です。給与明細と、働いた時間が分かるものを持って行くと話が早く進みます。

住まいや仕事のことでお困りのとき

NPO法人暮らし就労支援協会では、お住まいのご相談と就労のご相談をお受けしています。職場のことで悩んでいて家賃の支払いが心配になってきた、仕事を変えたいけれど一人では動けない、というご相談も受けています。相談は無料です。

虐待の調査や是正の指導は、上に挙げた公的な窓口の役割です。私たちは、どこに何を伝えればいいかを一緒に整理し、その後の暮らしを立て直すところをお手伝いします。生活保護の相談・申請は、お住まいの市区町村の福祉事務所が窓口です。

出典

監修:NPO法人暮らし就労支援協会

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