生活保護を受けながら出産するとき|出産扶助は33万6千円以内+入院料。妊娠が分かったら、先に福祉事務所へ

聴診器(医療のイメージ) 医療・扶助

妊娠が分かったとき、生活保護を受けている方から最初に出てくる言葉は、たいてい「お金はどうなるんでしょう」です。健診、入院、ベビー用品。どれも保護費のやりくりで出せる額ではありません。

生活保護には、出産のための「出産扶助」があります。加えて、妊娠中と産後には毎月の保護費に加算がつきます。ただ、どちらも自動では始まりません。この記事では、額と、妊娠が分かってから出産のあとまでの順番を書きます。

妊娠が分かったら、まず担当のケースワーカーに伝える

最初の一歩は届け出です。妊娠中の加算(妊婦加算)は、厚生労働省の通知で「届出によって行なう」と決められています。妊娠していることと何か月かは、母子健康手帳か医師・助産師の診断で確かめます。加算が始まるのは、妊娠の事実を確かめた日の翌月からです。届け出が遅れれば、その分だけ始まりも遅れると考えてください。

加算の額は月ごとに決まっています。1級地と2級地(横浜市・川崎市をはじめ神奈川県内のすべての市、浜松市・静岡市など)では次のとおりです。

時期 加算の額(月額)
妊娠6か月未満 9,350円
妊娠6か月以上 14,120円
産後(産婦加算) 8,690円

妊婦健診は、まず市町村の妊婦健康診査(受診券)を使います。それを使えずに医療機関で健診を受ける場合は、その費用を別に認めてよいと通知に書かれています。健診の受診券を受け取る段階で、ケースワーカーにも一言伝えておくと話が早く進みます。

出産扶助で出るものと、その額

生活保護法は、出産扶助の中身を「分べんの介助」「分べん前と分べん後の処置」「脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料」の3つとしています。原則としてお金で支給されます。

額は、国の「保護の基準」という告示で決まっています。令和8年度の表は次のとおりです。

項目 額
出産に要する費用(基準額) 336,000円以内
病院・助産所などで産む場合の入院料 8日以内の実際の入院日数分。医療扶助で認められる入院料の範囲で、基準額に上乗せ
衛生材料費 6,300円以内を上乗せ
産科医療補償制度に入っている施設での出産 30,000円以内を上乗せ

以前は、病院で産む「施設分娩」と自宅で産む「居宅分娩」で基準額が分かれていました。いまの表は基準額が1本で、施設で産むときに入院料が加わる形です。

基準額で足りない場合の決まりもあります。出産予定日が急に変わって予定の施設で産めなかった、予約していた医師や助産師の都合で介助を受けられなかった、病気やけがで入院している間に出産した。こうした事情があれば、基準額を388,000円まで引き上げてよいとされています。双子のときは基準額の2倍までです。生まれた赤ちゃんの聴覚検査の費用も、出産扶助の対象として扱ってよいとされています。

個室の希望やお祝いの食事など、ここに入らない費用が施設から請求されることがあります。その分がどう扱われるかは、施設を決める前にケースワーカーと確かめておいてください。

出産育児一時金や、自治体の助産制度との関係

「出産育児一時金の50万円は、もらえないんですか」と聞かれることがあります。生活保護を受けている世帯の人は、国民健康保険に入れないと法律で決まっています。国民健康保険から一時金が出ることはなく、その代わりが出産扶助です。

働いていて勤め先の健康保険に入っている場合は別です。生活保護法には、ほかの法律で受けられる給付を先に使うという原則があります。健康保険から一時金が出るなら、それを先に使い、足りない分を相談する順番になります。どこまでを出産扶助で見るかは、福祉事務所が判断します。

もう一つ、自治体には児童福祉法による「助産制度(入院助産)」があります。指定された病院で、出産費用の助成を受けて産める仕組みで、生活保護世帯を対象に含めている自治体があります(東京都など)。申し込みは入院の前に必要で、受け付けの窓口は自治体によって違います。横浜市では区の福祉保健センターのこども家庭支援課が受け付けています。どちらを使うかは、妊娠が分かった段階で福祉事務所と決めておくのが安全です。

生まれたあとにすること

出生届を出したら、赤ちゃんが世帯に加わったことを福祉事務所に届け出ます。世帯の人数が変われば保護費の計算が変わるので、法律でも速やかに届け出ることになっています。

保護を受けながら出産した場合、出産した月は妊婦加算が続き、翌月から産婦加算に切り替わります。期間は、母乳だけで育てている場合は5か月、それ以外は2か月が上限です。母乳かどうかは自己申告だけで決まるわけではなく、母乳以外に頼る割合が20%未満かどうかを、本人の申し立てをもとに医師や助産師の意見も聞いて判断するとされています。ひとり親になる場合は母子加算が、別に児童扶養手当の手続きもあります。母子加算の記事と児童扶養手当の記事に書きました。医療扶助の全体は医療扶助の記事が入口です。

ひとりで抱えずに、早めに話を

相談を受けていると、妊娠をケースワーカーに言い出せないまま数か月たっていた、という方に会うことがあります。責められるのではないか、と思うのは自然なことです。ただ、届け出が早いほど加算も早く始まり、どこで産むかもゆっくり選べます。

生活保護を受ける前の方で、妊娠をきっかけに暮らしが立ち行かなくなった場合も、出産扶助は申請のときから考えてもらえます。生活保護の全体は生活保護とはにまとめています。

住まいのことや、出産後の暮らしのことで不安があれば、無料の相談前チェックから状況を送ってください。メール(info@npokurashi.com)でもかまいません。内容を読んで、こちらから連絡します。出産扶助や加算を認めるかどうかを決めるのは福祉事務所で、運用は自治体によって違います。私たちはその手前で、話を整理するお手伝いをしています。

出典

・他法優先の原則(第4条第2項)、出産扶助の範囲(第16条)、出産扶助は金銭給付が原則(第35条)、届出の義務(第61条):生活保護法 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000144(確認日2026年11月5日)
・妊産婦加算の額と始まる月(別表第1第2章1)、出産扶助基準(別表第6:基準額336,000円以内、8日以内の入院料の加算、衛生材料費6,300円以内):厚生労働省「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82051000&dataType=0&pageNo=7/https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82051000&dataType=0&pageNo=8(確認日2026年11月5日)
・妊産婦加算は届出による・産婦加算の期間(第7の2の(2)のア)、妊婦定期検診料(第7の2の(10)のカ)、出産費の特別基準388,000円・双生児は2倍・産科医療補償制度の30,000円(第7の7):厚生労働省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8432&dataType=1&pageNo=1(確認日2026年11月5日)
・入院料の範囲(問46)、「真にやむを得ない事情」の3つの場合(問47)、出産扶助の入院料(問51)、「専ら母乳によって」の判断(問54)、新生児聴覚検査料(問103):厚生省社会局保護課長通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8433&dataType=1&pageNo=1(確認日2026年11月5日)
・生活保護を受けている世帯に属する者は国民健康保険の適用除外(第6条第9号):国民健康保険法 e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192(確認日2026年11月5日)
・出産育児一時金の額(50万円):厚生労働省「令和5年4月に実施される厚生労働省関係の主な制度変更」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198659_00015.html(確認日2026年11月5日)
・助産制度の対象に生活保護世帯を含む例:東京都福祉局「助産制度」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/josan/横浜市の申込窓口:横浜市「助産施設」https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/oyakokenko/ninshin/josanshisetsu.html(いずれも確認日2026年11月5日)

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