住まいの相談員とシェルターに、国が予算を要求しました|ただ、あなたの街にあるとは限りません

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2026年8月、厚生労働省が来年度(令和9年度)の予算の要求内容を公表しました。そのなかに、住まいに困っている人への支援を広げる項目がいくつも入っています。

ただし、これは「要求」の段階です。決まったわけではありません。そして仮に予算がついても、その事業をやるかどうかを決めるのは、国ではなくお住まいの市区町村です。ここを押さえたうえで、中身を見ていきます。

何があったのか

厚生労働省の来年度予算の要求額は、一般会計で36兆5,803億円でした。今年度(令和8年度)の当初予算は35兆433億円ですから、1兆5,370億円の増額を求めていることになります。

このうち、私たちの読者に直接関わるのが「生活困窮者自立支援の推進」という項目です。

  • 令和9年度 概算要求額:1,000億円
  • 令和8年度 当初予算額:827億円

173億円、およそ1.2倍を求めています。生活保護に至る前の段階で相談を受ける、あの制度の予算です。

「概算要求」は、まだ決まっていないという意味です

聞き慣れない言葉なので、先に説明します。

概算要求とは、各省庁が「来年度はこれだけ使わせてください」と財務省に出す要望書のようなものです。毎年8月末に出します。ここから財務省との調整があり、政府の予算案が固まるのが年末。国会で審議されて成立するのが、翌年の春です。

つまり今回の内容は、削られることも、形が変わることもあります。「来年からこうなります」と読むには早い段階の話だ、と受け取ってください。

住まいに関わる中身を3つ

要求の資料には、住まいに関する事業が具体的に書かれています。当会が関わっている分野に絞って3つ挙げます。

1つめ、住まい相談支援員。生活困窮者の相談窓口(自立相談支援機関)に、住まいの相談を担当する支援員を置けるようにする仕組みです。令和7年度から配置できるようになっており、来年度もこの配置を進めるとされています。

2つめ、シェルター事業。住むところがない人に、一定期間、宿泊場所と食事、衣類などの日用品を提供する事業です。泊まる場所を確保したうえで、住まい探しや仕事の相談につなぐことを想定しています。

3つめ、地域居住支援事業。部屋を借りるところと、借りたあとの両方を支える事業です。資料には、不動産業者への同行、保証人や緊急連絡先が不要な物件・家賃の低い物件の情報を集めること、入居後に訪問して見守ること、が挙げられています。

このほか、頼れる身寄りがいない人からの相談を担当する支援員を新たに置けるようにすること、就労準備支援・家計改善支援の拡充、支援員の処遇改善なども入っています。

良くなりそうなこと

読み手にとって何が変わりうるのか、整理します。

第一に、住まいの話を切り出せる窓口が増える可能性があります。「家賃が払えない」「保証人がいなくて借りられない」というご相談は、これまで担当がはっきりしないまま扱われることがありました。住まい相談支援員という役割が置かれれば、話の持って行き先ができます。

第二に、保証人の問題に、公的な支援が正面から向き合う形になっています。保証人や緊急連絡先が不要な物件の情報を集めることが、事業の内容として文書に書かれている。当会が日々受けているご相談と、いちばん重なる部分です。

第三に、支援員の待遇を改善する話が入っていること。地味に見えますが、支援の現場は人が続かないと成り立ちません。相談員が1年で入れ替わる窓口と、5年いる窓口では、受けられる支援の質が変わります。

注意しておきたいこと

一方で、期待しすぎないほうがいい点もあります。

予算がついても、事業を始めるかどうかは市区町村が決めます。国の予算は、自治体が事業を行ったときに費用の一部を負担する形です。自治体が手を挙げなければ、その街にその事業はありません。

今回の要求は令和9年度、つまり2027年4月からの話です。いま困っている方の役にすぐ立つ話ではありません。今日明日の住まいのことは、いまある制度で動かすしかありません。

「支援員を置けるようにする」は「置く」ではありません。資料の書き方は、置けるようにする・配置を進める、です。実際に何人配置されるかは、これからの話です。

いちばんの課題は、やっている自治体が少ないこと

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい点です。

厚生労働省の資料には、令和7年度に各事業を実施している自治体の数が載っています。対象は福祉事務所を置いている904自治体です。

  • 就労準備支援事業:764自治体(約85%)
  • 家計改善支援事業:795自治体(約88%)
  • シェルター事業:372自治体(約41%)
  • 地域居住支援事業:98自治体(約11%)

就労と家計の支援は9割近くまで広がっているのに、住まいの支援は、シェルターで4割、地域居住支援に至っては1割です。10の自治体のうち9つでは、この事業が動いていないことになります。

国もこの偏りは把握しているようで、来年度は「これらの事業をやっていない自治体で、都道府県が代わりに期間を区切って実施する」という新しい枠組みを要求しています。裏を返せば、それだけ市区町村任せでは広がらなかった、ということでもあります。

制度がある、と、自分の住む街で使える、は別のことです。ニュースで「住まいの支援が拡充」と聞いても、まずご自身の市区町村で何が動いているかを確かめる必要があります。窓口は、お住まいの市区町村の生活困窮者の自立相談支援窓口です。区役所・市役所の福祉の窓口で「自立相談支援の窓口はどこですか」と尋ねれば案内してもらえます。

そして、制度が広がるのを待っている間も、家賃や光熱費の支払いは毎月来ます。入ってくる額を増やすのは簡単ではありませんが、出ていく額のほうは、今日から手をつけられます。

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家賃を滞納している、更新を断られそう、保証人がいなくて部屋が決まらない、退去を迫られている――そうしたご相談を、NPO法人暮らし就労支援協会でお受けしています。お住まい探しのご相談と、就労のご相談の両方に対応しています。相談は無料です。

生活保護の相談・申請は、お住まいの市区町村の福祉事務所(区役所・市役所の生活支援課など)が窓口です。申請は権利として認められており、相談だけでも受け付けてもらえます。窓口で何をどう話せばいいか分からない、という段階でも構いませんので、一度ご連絡ください。

出典

監修:NPO法人暮らし就労支援協会

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