10月から最低賃金が上がります。神奈川は時給1,279円、静岡は1,154円。8月に入って各県の審議会の答申が出そろい、当会が活動している横浜と、磐田・浜松の両方で金額が決まりました。ここでは何がどう変わるのか、そして生活保護を受けながら働いている方が気にされることの多い「収入が増えたら保護費はどうなるのか」までを整理します。
何が決まったのか
まず7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会が、今年度の引上げの「目安」を答申しました。全国の加重平均で55円引き上げ、時給1,176円とする内容です。都道府県はA・B・Cの3ランクに分けられ、目安はAランクが54円、B・Cランクが56円とされました。
この目安をもとに、実際の金額は各都道府県の審議会が決めます。神奈川と静岡の答申は次のとおりです。
| 現行 | 改定額 | 引上げ額 | 発効予定日 | |
|---|---|---|---|---|
| 神奈川県 | 1,225円 | 1,279円 | 54円(4.40%) | 2026年10月1日 |
| 静岡県 | 1,097円 | 1,154円 | 57円(5.20%) | 2026年10月15日 |
神奈川の答申は8月4日、静岡は8月12日です。静岡はBランクの目安56円を1円上回る57円で、労働局の発表によれば昨年度の63円に次いで2番目に大きい引上げ額でした。
なお、これはまだ答申の段階です。異議申出などの手続きを経て正式に決まります。発効日も現時点では予定として発表されているものです。
そもそも最低賃金とは
最低賃金は、雇う側がこれを下回る時給で人を働かせてはいけない、という下限の金額です。正社員かパートかアルバイトかは関係ありません。契約社員も、派遣で働いている方も対象になります。
適用されるのは、住んでいる場所ではなく働いている場所の都道府県の金額です。横浜に住んでいても勤務先が東京都内なら東京の最低賃金、という具合です。派遣で働いている場合は、派遣元ではなく派遣先の所在地で判断します。
月給で働いている方も無関係ではありません。月給を1か月の所定労働時間で割り戻した額が最低賃金を下回っていれば違反です。
収入はどのくらい増えるか
1日8時間・月20日、つまり月160時間働いた場合で計算すると、神奈川では月におよそ8,640円、静岡ではおよそ9,120円の増加になります。年に直せば10万円前後です。週3日・1日5時間くらいのパートでも、神奈川なら月3,000円強は変わります。金額としては大きくないと感じるかもしれませんが、家賃や光熱費が上がり続けているなかで時給の下限そのものが引き上げられる意味は小さくないと私たちは考えています。
見落とされやすいこと
いくつか、相談を受けていて説明が必要になる点があります。
発効日までは今の金額のままです。神奈川は10月1日、静岡は10月15日から。9月に働いた分の賃金は上がりません。静岡は神奈川より2週間遅く、同じ「10月から」でも半月ずれます。10月分の給与を受け取ったとき、15日より前と後で単価が違うこともあり得ます。
生活保護を受けながら働いている場合、保護費は調整されます。ここでよく誤解が生まれます。収入が増えれば、その分だけ保護費は減ります。ただし働いて得た収入には勤労控除(基礎控除)があり、稼いだ額がまるごと保護費から差し引かれるわけではありません。控除される分だけ、働いた人の手元に残るお金は増える仕組みです。詳しくは生活保護は働きながら受けられる?収入認定と基礎控除の仕組みで説明しています。
10月以降、時給が上がって給与額が変われば、その給与明細は必ず福祉事務所へ提出してください。申告しないままだと、後から「収入があったのに申告しなかった」として返還を求められることがあります。金額が上がるタイミングは申告漏れが起きやすいので、注意してほしいところです。
時給が上がっても、働く時間が減れば収入は増えません。むしろ減ることもあります。実際、これまでの改定の後にも「時給は上がったのにシフトを削られた」というご相談をいただいてきました。10月以降の1〜2か月は、シフト表と給与明細を見比べておくといいと思います。
もうひとつ、産業によっては地域別最低賃金とは別に「特定最低賃金」が定められていることがあります。両方が適用される場合は高いほうが適用されます。自分の業種にあるかどうかは、各都道府県の労働局のサイトで確認できます。
制度として残る課題
今回の引上げ額は、全国の目安で見ると昨年度の66円から55円へと縮小しました。食費や光熱費の負担が大きい単身世帯や子どものいる世帯では、月8,000円ほどの増加では物価の上がり方に追いつかないという声も出ると思います。
それから、これは私たちが現場で一番強く感じることですが、住宅扶助の上限額は最低賃金と連動しません。横浜市の単身世帯で52,000円、磐田市で37,200円、浜松市で37,700円という上限は、時給が上がっても動きません。家賃の相場が上がっていくなかで、この上限内で住める部屋を探すのは年々難しくなっています。働いて得られる収入の下限は上がっても、住まいの側の制度が同じ速さで動いているわけではない、というずれは残ります。
また、賃上げは雇う側にとっては負担の増加でもあります。小さな事業所ほど、時間や人数の調整という形で吸収しようとする力が働きます。就労を目指す方にとって、求人そのものが減らないかどうかは、10月以降に見ていく必要があります。
働くこと、住まいのことで迷っていたら
時給が上がることは、働き始めるきっかけにもなります。一方で、体調が万全でない、ブランクが長い、まず住むところを何とかしたい、という状態で「働けと言われても」と感じている方もいると思います。
私たちは、住まい・仕事・学びの3つを行き来しながら相談をお受けしています。生活保護を受けながら働くときの申告の仕方、就労に向けた準備、保証人がいないときの部屋の探し方まで、どこから話していただいてもかまいません。相談は無料です。
NPO法人 暮らし就労支援協会
関連して、働き始めたあとの保護の扱いについては就職が決まったら生活保護はどうなる?、保護を受ける前に使える制度については住居確保給付金の記事もあわせてどうぞ。
出典
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日答申)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html(2026年8月20日確認) - 神奈川労働局「神奈川県最低賃金額54円の引上げへ-本日、神奈川地方最低賃金審議会が答申-」(令和8年8月4日)
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/home/houdou/20260804_00001.html(2026年8月20日確認) - 静岡労働局「静岡県最低賃金の改正について(答申)」(令和8年8月12日)
https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/news_topics/newpage_00035.html(2026年8月20日確認)
本記事は2026年8月20日時点で公表されている情報にもとづいています。最低賃金額は答申段階のもので、正式決定および発効日は各労働局の発表をご確認ください。個別の労働条件や保護の適用については、勤務先の所在地を管轄する労働局・労働基準監督署、またはお住まいの地域の福祉事務所へご相談ください。

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