お金がなくて病院に行けないとき|無料低額診療事業という仕組み

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相談の席で「最後に病院に行ったのはいつですか」と伺うと、年の単位で答えが返ってくることがあります。理由はだいたい同じです。保険料を滞納していて保険証のことを言い出しにくい、あるいは窓口の3割が今月はどうしても出せない。

先に書いておきます。受診をやめている理由がお金なら、生活保護を申請する前の段階でも手が残っています。そのひとつが無料低額診療事業です。名前が硬いので敬遠されがちですが、法律に書かれた制度で、横浜市内にも実施している医療機関があります。

名前のとおり、無料または低額で診療する事業です

根拠は社会福祉法です。条文はごく短いものです。

社会福祉法 第2条第3項第9号

次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
九 生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業

第二種社会福祉事業なので、届け出れば経営主体を問わず実施できます。京都府の説明ページにもそう書かれています。全国の病院や診療所が、自分の判断で手を挙げて実施しているという形です。

誤解されやすいところを先に潰しておきます。厚生労働省が平成30年1月18日に出した通知は、この事業について「被保護者に限られるものではなく、広く生計困難者一般を対象とするもの」としています。生活保護を受けている人のための制度ではありません。むしろ、受けていない人こそ使える余地があります。

実施施設の側にも要件があります。京都府のページによれば、生活保護を受けている人と、無料または診療費の10%以上の減免を受けた人の延数が、取扱患者の総延数の10%以上であること。それに、医療ソーシャルワーカーを置いて相談体制を整えること。相談に乗る担当者がいる前提で組まれた事業です。

どこで受けられるかは、市や県の一覧で分かります

実施している医療機関は都道府県や市がまとめて公開しています。横浜市は健康福祉局のページに一覧を出していて、2026年8月18日時点で市内21施設。鶴見区、神奈川区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、金沢区、緑区、泉区、戸塚区に散らばっています。指定都市・中核市を除く神奈川県の所管域については、県のオープンデータカタログに一覧のPDFがあります。

ひとつだけ、手順で気をつけてほしいことがあります。飛び込みで行かないでください。大阪府のページは、利用を検討する場合はまず実施施設へ電話などで問い合わせ、専門相談員に世帯の収入状況を説明するように、という順序を明記しています。相模原市も「事前に各施設の相談室へ電話で」と案内しています。横浜市も、診療科や料金は各施設に問い合わせるようにと書いています。

電話が億劫だという方は多いのですが、ここは省けません。減免が受けられるかどうかを判断するのは施設の相談室だからです。

対象は「生計困難者」。ただし基準は施設ごとに違います

千葉県と大阪府はどちらも、対象を「低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者等の生計困難者」と説明しています。収入がいくら以下、という全国共通の線が引かれているわけではありません。

大阪府のページは、減免の金額について各医療機関で世帯の収入等の基準が異なる可能性がある、としています。千葉県も、対象者や利用手続の詳細は施設ごとに規定しているので各施設に問い合わせるように、と書いています。

ですから、この記事で「行けば無料になります」とは書けません。書けるのは、無料になる人も、一部が減額される人も、対象外と判断される人もいる、というところまでです。それでも、聞いてみる価値はあると私たちは思っています。聞かなければゼロですから。

薬代は別の話になります

ここが実務でいちばん引っかかるところです。この事業は「診療を行う事業」なので、減免が働くのは医療機関の窓口で払う分です。厚生労働省の平成30年の通知は、診療施設内で行った投薬にかかる費用も含めて差し支えない、として院内処方の扱いを明確にしています。一方で、院外の保険薬局で受け取る薬については触れていません。

その裏づけになるのが、自治体が独自に始めた助成です。旭川市は、市内在住で無料低額診療事業を利用している人が市内の薬局で調剤処方を受けた場合に、保険適用分の調剤費用の全部または一部を助成しています。青森市と苫小牧市にも同じ趣旨の事業があります。薬局の窓口では減免が働かない、という前提がなければ、こうした助成は生まれません。

横浜市に同じ助成があるかどうかは、私たちが調べた範囲では確認できませんでした。分からないことを断定するわけにはいかないので、そのまま書いておきます。処方が院内なのか院外なのか、薬代はどうなるのか。電話で相談する段階で、この2点は必ず聞いてください。

保険料が払えないなら、滞納する前に区役所へ

もうひとつの入口が、国民健康保険そのものの減免です。国民健康保険法第77条は、市町村は条例の定めるところにより、特別の理由がある者に対して保険料を減免し、またはその徴収を猶予することができる、と定めています。

横浜市の場合、災害や失業、所得の減少などの事由で、所得割の減額や均等割の免除、6か月以内の徴収猶予、分割納付の相談ができます。窓口はお住まいの区の保険年金課です。市のページには、支払いが困難な場合は滞納する前に相談を、とはっきり書かれています。

知っておいてほしいのは、保険料を滞納したからといって、それだけで国保の資格を失うわけではないということです。資格を失う時期は法第8条に定められていて、その区域内に住所を有しなくなったときや、他の医療保険に入ったときなどに限られます。滞納は資格喪失の事由ではありません。ただし督促状が届き、延滞金が発生し、財産の差押えに進むことはあります。放っておいてよいという意味ではまったくありません。

保険証はあるけれど3割が出せない、という場合には、別の制度もあります。国民健康保険法第44条は、一部負担金を支払うことが困難と認められる被保険者について、減額、免除、徴収猶予の措置を採ることができると定めています。横浜市では、災害のほか、疾病や事故、失職などで世帯の収入が減ったとき、療養の給付を受けたことで生活が困窮したときが対象に挙げられており、内容は免除または2割・4割・6割・8割の減額、あるいは徴収猶予です。預貯金等の資産が基準生活費の3か月分以上あると対象外になります。これも申請が要りますので、区役所の保険年金課保険係へどうぞ。

それでも立ち行かないときは、医療扶助があります

ここまでの手を尽くしても暮らしが回らないなら、生活保護という選択肢が残っています。保険が使える範囲の治療や薬なら原則として窓口負担なしで受けられる医療扶助があり、申請の手順も難しいものではありません。病気やけがで働けなくなっている場合の考え方は別の記事にまとめました。

その手前でできることとしては、固定費の見直し生活福祉資金もあります。順番はひとつではありません。

受診だけはやめないでください

症状が重いかどうかを私たちが判断することはできませんし、してはいけないと思っています。ただ、お金を理由に受診の入口で止まっている方が、相談に来られる方のなかに確かにいます。そして止まっている間に、体のことも暮らしのことも、たいてい難しくなっていきます。

私たちは横浜市西区のNPO法人で、住まい仕事の相談をお受けしています。医療そのものを提供することはできませんが、どの窓口に何を持って行けばよいのか、電話で何と切り出せばよいのかを一緒に整理するところまではお手伝いできます。

まずは無料の相談前チェックに、いまの状況を書けるだけ書いて送ってください。折り返しご連絡します。

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